研究課題/領域番号 |
24720336
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
上村 敏郎 獨協大学, 外国語学部, 専任講師 (20624662)
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キーワード | 啓蒙専制 / オーストリア / 書籍商 / 社会的ネットワーク / ドイツ・ユニオン |
研究概要 |
本研究の目的は啓蒙専制下において、皇帝による「上からの啓蒙」と知識人による「下からの啓蒙」が交わる結節点である、出版者の社会的ネットワークの構造を分析することで、啓蒙専制期の公共圏の問題を明らかにすることである。 2013年度は主に、ドイツ及びオーストリアにおいて史料調査をおこなった。当初、ドイツでの史料調査の主眼は、ウィーンの書籍商ヴーヘラーと取引があった出版業者に関する史料調査にあった。この目的に沿う形での発見はライプツィヒのドイツ書籍業組合図書館が所蔵していたヴーヘラーがハレのセバスティアン・フリードリヒ・ファブリツィウスに宛てた一通の書簡である。しかし、それ以外でヴーヘラーに関連する適切な出版業者関係の史料を見つけることはできなかった。しかし、その代わりに、ライプツィヒ市文書館では、ヴーヘラーが所属していた秘密結社ドイツ・ユニオンの幹部デーゲンハルト・ポットの取り調べの記録を発見した。ニュルンベルクの市立文書館ではウィーンでルター派共同体を設立しようとした時におこなわれた資金援助を請うヴーヘラーの印刷された文書を発見した。 オーストリアでの調査は主にウィーン司教座文書館でおこなった。ここでは秘密結社ドイツ・ユニオンと関係していたと考えられる聖職者に関係する史料を調査収集した。また、リンツのオーバーエスタライヒ州立文書館においても史料調査をおこなったが、ヴーヘラーの社会的ネットワークの解明に直接役立つ史料は発見できなかった。そのほかに日本国内では入手が難しい文献をドイツ、オーストリアの国立図書館で収集した。また、本研究に関係する研究成果として論文を1本公開すると共に、研究報告を2回ほどおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2013年度は新しい研究環境へ移ったこともあり、自分の研究ペースをつかむまでに時間を要したという点で、研究の進捗状況はやや遅れ気味である。ただし、夏期休暇を利用しておこなった史料調査も本来の計画とは少し異なるものの、重要な史料を発見することができているので、今後の研究の発展につながっていくものだと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は本研究の最終年度に当たるため、当初予定していた研究計画に若干の変更を加え、ウィーン書籍商ヴーヘラーの社会的ネットワークのうち、さらなる長期的な調査が必要になると考えられる出版業者のネットワークの調査はひとまず中止し、宗教ネットワークと秘密結社ドイツ・ユニオンのネットワークに関して重点的に調査をおこなう。また、これまでの研究調査の成果をまとめ、公表する。
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