本研究は、ハプスブルク君主国のヨーゼフ2世の治世、その啓蒙専制体制において皇帝による「上からの啓蒙」と知識人による「下からの啓蒙」が交わる場所としての出版メディアに着目し、出版者の社会的ネットワーク構造を分析することで、啓蒙専制体制の公共圏の問題を明らかにするものである。分析の対象として、とくにウィーンで活躍した出版者の一人であるゲオルク・フィリップ・ヴーヘラーを選択した。今まで収集し、分析した史料からいえることは、彼の出版活動がドイツ語圏各地の書籍業者やカトリック圏におけるプロテスタント支援団体、秘密結社ドイツ・ユニオンと結びつきながら、おこなわれていたということである。
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