研究課題/領域番号 |
24720338
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
姉川 雄大 千葉大学, アカデミック・リンク・センター, 特任助教 (00554304)
|
キーワード | ハンガリー / 戦間期 / 自由主義 / 人種主義 / 権威主義 / 社会政策 |
研究概要 |
本年度の成果は、1)本研究課題のヨーロッパ自由主義史研究における意義をより具体的に明確化するとともに、その検討の成果を発表したこと、2)昨年度の史料状況調査の成果を踏まえ文書館史料を収集したことの2点であり、具体的にはそれぞれ以下のとおりである。 1.戦間期ハンガリーの社会政策と人種主義の関係を検討することによって、東中欧における自由主義と権威主義の関係がなぜ、どのように明らかになるのかという点を明らかにした。ここでは、東中欧史における「特有の道」論克服を目的とした東中欧自由主義史研究の持つ問題点と、その問題点を克服するという点における「人種福祉国家」という視点の有用性を明らかにした(この成果は[図書]「自由の限界、福祉の境界」において発表)。そのうえで、本研究課題が対象とする「全国民衆家族基金」の施策をこの主題に即して位置付けるための検討を行った。ここでは、ハンガリー史における社会的自由主義の発展の証左とも評価される「全国民衆家族基金」の人種政策としての側面が、ある種の「市民社会」的な基盤に支えられていたことの問題性を指摘した(この成果は[図書]「東欧近現代史から見た「市民社会」」において発表)。 2.昨年度の成果を踏まえ、同基金の政策実施組織である「社会監督局」に関して国立および地方文書館の史料収集を行い、社会史的検討の準備を行った。当初想定していたバラニャ県およびヘヴェシュ県文書館史料群から変更し、国立文書館およびペシュト県文書館における「社会監督局」関連史料群の閲覧・収集を行った。あわせて、ジェール=モション=ショプロン県ショプロン市文書館所蔵史料群についても一定程度の収集を行うことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画に記載した事項のうち、本研究の成果を西洋近現代史全体に位置付けることについては当初計画通りに実施し、成果の発表を行った。その中では、刊行史料収集の成果に基づき、在地社会と社会政策システムの関係に関する具体的な考察を一部盛り込んでいる。また、文書館史料調査については、平成24年度計画と前後したが、平成25年度末時点で、主要な刊行史料・国立文書館史料・地方(ヘヴェシュ県、ペシュト県、ショプロン市)文書館史料の収集をある程度すすめることができ、収集史料の整理にも着手した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本研究の最終年度にあたり、平成25年度に着手した調査・分析・考察を継続するとともに、この成果をまとめる。このため以下の3点が研究計画となる。 1.平成25年度に引き続き、これまでに収集した史料の整理を行う。(4~7月) 2.これら史料に基づき、在地社会と社会政策システムの関係について、具体的事例を題材とした分析を行うとともに、その過程で必要性が明らかになった史料の補完のため最終的な現地調査を行う。(4~10月) 3.上記分析に基づき、ヨーロッパ近現代史研究の大きな課題に位置付けつつ、戦間期ハンガリー「人種福祉国家」の特質を明らかにし、本研究の成果として発表する。(10~3月)
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、収集史料の撮影画像データの整理・閲覧容易なデータへの変換・バックアップの方針策定の必要が生じ、それに伴って補助者の雇用が遅れたために生じたものである。 史料収集のための海外旅費および設備備品費、成果発表準備のための消耗品費等の経費、同目的および研究の位置付けに関するブラッシュアップを目的として使用する国内旅費については計画通りに使用する。加えて、史料データの整理およびバックアップ等のための人件費や消耗品費等については、当初予定に昨年度未使用分を加えて使用する。
|