20世紀ヨーロッパでは、国内の民族マイノリティを相互に交換しあう住民交換が繰り返された。本研究は、20世紀ヨーロッパにおける個人の居住権と財産権への国家の干渉について、国際紛争の処理における住民移動と財産の所有権移転に着目して検討した。そのなかで、①同質な国民による国民国家の形成という理念に基づく民族マイノリティの追放が20世紀前半にいかに急進化していったのか、②第二次世界大戦後の戦後処理と東欧の民族秩序再編がいかに結びつき、移住する住民の財産がいかなる取り扱いを受けたのか、③住民移動の記憶がその後の国際政治の環境のなかでいかに変容してきたかについて考察した。
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