研究課題/領域番号 |
24720342
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 秀明大学 |
研究代表者 |
藤井 真生 秀明大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70531755)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中世史 / 植民運動 / チェコ / ドイツ |
研究概要 |
予定通り、先行研究の把握と研究文献の収集に努めた。本研究は中世における「辺境」の分析を課題としているため、文献の収集にあたっては、チェコ・ドイツ周辺に限定せず、広く北海地域やイベリア半島なども対象とした。また、L. フラボヴァーの『オロモウツ司教領の封建所領経済』(1964)の読み直しをおおない、そこで利用されている証書史料とカヴァーしている地域の範囲を確認した。 そのうえでフラボヴァーのあげている『モラヴィア証書史料集』Codex diplomaticus Moraviaeの3巻および4巻に所収されている史料の分析をすすめた。彼女の研究では関連資料として列挙されているものの、必ずしも内容に関する言及ないし分析がないため、重複するものもあるが、いちから自分で確認した。現段階で確認できた範囲では、ブルーノ司教がてがけた農村の植民開墾はいずれも大規模で、なかには210フーフェに達する村落も存在した。かつて報告者が確認したところでは、チェコの入植者は夫婦で平均0.5フーフェを与えられていた。これにしたがえば、420組の夫婦が入植したことになり、これはもはや都市である。一方、阿部謹也氏の研究によればプロイセンでは3フーフェが与えられていたというが、こちらの数字をあてはめた場合でも70組の夫婦が入植したことになり、規模が大きいことにはかわりがない。今後さらなる史料分析をすすめ、正確な数字を算出しなければならない。その他、ブルーノの出身地を反映してマクデブルク法(ドイツ東部で優勢)で入植がおこなわれていること、入植を監督する代官に何度も同名の者が現れること、などが確認できた。代官の同定については、その他の史料との突き合わせをおこなうことにより確定させたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、先行研究の把握や研究文献の収集は予定通りにおこなうことができた。しかし、証書史料の確認は、当初予定していたブルーノ司教時代についてすべて終わらせることができなかった。その理由は二つある。一つは、本研究とは別の科研費による共同研究の成果として、2013年5月に開催される日本西洋史学会の大会シンポジウムで発表をおこなうことになり、その準備に時間をさかれたこと、そしてもう一つは、2012年度で前任校を退職し、4月より新たな職場へ異動することになったため、学内行政の引継作業などにおわれたこと、である。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、平成24年度の研究計画を達成できなかったため、今年度は継続してブルーノ司教時代のオロモウツ司教領における入植状況の把握に優先して取り組む。そのうえで同時代の他の教会所領、具体的にはシトー会系修道院領やプラハ司教領などの分析へとすすむ。計画実施の遅れをふまえて、今後の作業の進展速度により、修道院領かプラハ司教領のどちらかにしぼることもある。その場合には、世俗所領との比較検討は断念し、3年間かけて教会所領全体の入植運動を考察することにする。 なお、本年度はインターネットなどで入手できないチェコ語の研究文献を入手するためにチェコへ渡航し、あわせて文書館などを訪問する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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