研究課題/領域番号 |
24720342
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
藤井 真生 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70531755)
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キーワード | 中世史 / 植民運動 / チェコ / ドイツ |
研究概要 |
本年度は、前年度に実施することのできなかった現地調査を9月におこなった。モラヴィア南部の村ルプレヒトフを訪問し、隣接する地域にかつて存在した植民村ハムリーコフの跡地を訪ねた。台地のうえに位置し、近くに小川は流れているものの、全体として農耕・流通・生活にはそれほど有利な環境ではないことが確認できた。しかし、隣のルプレヒトフももともと開墾村であるが、それほど地理的条件は変わっているようにはみえず、なぜハムリーコフだけが消滅したのかは現地調査からでは明らかにできなった。今後、文献資料からもアプローチしていく必要がある。現地調査により、中世植民村がどのような環境(高低差、水利、近隣諸村との距離など)に置かれていたのかを、地図上だけではなく、自分の目で確認できたことは大きな収穫だった。 一方、証書史料の分析としては、フラボヴァーなどの先行研究で取り上げられてきたオロモウツ司教ブルーノ時代の所領を示す史料の確認を終え、オロモウツ司教座が設置された前後の特権文書から、ブルーノの前後の時代、そして14世紀にはいるあたりの史料までを確認した。具体的な分析に関しては新年度の課題になるが、ブルーノ時代との比較についての材料はそろえることができた。 以降の研究に関わる準備として、プラハ司教領・大司教領についてのモノグラフを収集した。オロモウツ司教領との比較が目的である。また、それらの分析が早く進んだ場合に備えて、修道院関連の文献も収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目標としてはプラハ司教領の証書史料の分析までを終えるつもりであったが、以前採択された科研費の研究成果である博士論文の刊行準備に時間をとられ、文献確認の段階にとどまり、実際の史料分析にまで着手することができなかった。また、ブルーノ時代の史料だけではなく、確認する時代の幅を大きくとったことが、オロモウツ司教領の史料分析を終えるのに時間がかかった理由である。しかし、その結果として、ブルーノ時代の特徴をより鮮明に捉えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の段階では、オロモウツ司教領の分析を終えたあとは、シトー会系の修道院かプラハ司教領との比較をおこなうことを考えていたが、現段階では後者の分析に絞る方向に計画を変更している。当然、制度的に考えて修道院よりも司教領のほうが比較対象としては適切なのだが、史料の残存状況も確認した結果として改めて選択した。ただし、モラヴィア地方の状況を確認するために、チェコ全体ではなく、モラヴィア地方の大修道院にかぎって、比較対象として分析を継続しようと考えている。
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