研究課題/領域番号 |
24720349
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
上條 信彦 弘前大学, 人文学部, 准教授 (90534040)
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キーワード | 圧痕 / 残存デンプン / 白神山地 / 珪酸体 / 残存デンプン / 花粉 |
研究概要 |
① 前年度記録データの解析と資料の拡充・補完 岩木川上流域の砂子瀬~大川添地区は、狭い段丘面が集中しており、その段丘面上の平地に多数の縄文遺跡が確認されている。遺跡の密度や視覚的な範囲からひとつの領域を形成している。青森県川原平(1)遺跡および水上(1)遺跡の土壌サンプルを得たほか、昨年度調査した川原平(1)遺跡、大川添(3)遺跡については、水洗選別作業が終わり、種子同定および炭化材の樹種同定、珪酸体・花粉分析の結果を得た。これにより、縄文時代~現代に至る植生の変遷と、それに対するヒトの関与を検討した。 花粉分析では縄文中~後期には、クリ・コナラ亜属が優勢であるのに対し、後期後葉~晩期には、オニグルミ・トチなどエネルギー源の食用植物が増加する。特にトチは潜在植生に対し、極端に多く積極的な利用がうかがえる。また、栽培植物であるウルシとヒエが検出された。周辺環境を示すものとしては、縄文晩期にはタデ属(ヤナギタデ)が多く、湿潤な土地であることが分かった。また下位植生は、植物珪酸体分析の結果、多雪地域に多いササ属(おもにチマキザサ節)などの笹類が繁茂していたと見られる。 さらに補完作業として秋田県の同時期の遺跡資料を調査し、圧痕観察、石器の残存デンプン分析を進めたほか、土壌サンプルを回収した。東日本地域での比較資料として、いち早く温暖化が進んだと考えられる関東南部の変化過程を検討するために、神奈川県の縄文前期の資料を調査した。 ②分析結果の公表 ブナ林帯の縄文時代食料利用の典型例として、以上の結果を「白神山地登録20周年記念シンポジウム」など2学会で発表したほか、昨年度までの成果を国際学会で公表し、デンプン分析の成果を論文化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた、全ての土壌試料の選別を終えたほか、昨年度の分析分については、学会発表を行うなど、データ化や論文化を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
①情報・意見交換 分析に関するワークショップを開催し、県内外研究者との議論、圧痕などに関する情報を得る。特に圧痕研究は全国的に推進されており、データの蓄積が進んでいるため、関連する研究者を招き、意見交換を行う予定である。 ②検証・総括および公開 各分析結果を植物資源利用の観点から植物採集から食料化までの一連のモデルとして総合化を行い、食料加工からみた植物質資源利用の実態を解明する。データを軸に積極的に学会発表を行い、最終的に報告書をまとめる。また。研究協力者とともに研究会を主催するほか、附属センターにおいて、本研究をテーマにした特別展示を行い、成果を発信する。
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