研究課題/領域番号 |
24720354
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
舟橋 京子 (石川 京子) 九州大学, 総合研究博物館, 助教 (80617879)
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キーワード | 横穴墓 / 抜歯風習 / 通過儀礼 / 服喪儀礼 / 古墳時代 |
研究概要 |
①国内の出土人骨資料に関しては、九州大学所蔵西日本横穴墓出土人骨および大田区立郷土博物館所蔵の東日本古墳時代後期の横穴墓出土人骨の資料調査を行った。これらの調査においては抜歯風習を用いた通過儀礼の復元および遺跡の評価に必要な情報収集を行った。古人骨の資料調査においては儀礼の復元に必要な横穴墓被葬者の親族関係に関する情報収集と遺跡の評価に必要な生業復元の為の情報収集を行う作業補助者として学生を同行した。また、出土人骨に関する報告書および関連文献の複写・収集を行った。 以上の調査および分析の結果、当初の予測通り、東日本の関東地域では西日本とは異なり古墳時代後期のかなり遅い段階においても抜歯風習を用いた服喪儀礼が残存することが確認できた。但し、資料状況の問題から被葬者親族関係復元などの人骨の出土状況に関する情報収集が終了しておらず、平成26度も大田区郷土博物館において引き続き調査を行う必要がある。研究成果に関しては、今年度中に学術論文としてまとめ成果を公表する予定である。 ②日本列島以外のアジア地域に関しては、九州大学人文科学研究院において報告書掲載の出土人骨情報の精査を行った。 ③昨年度の本科学研究費を使用して調査を行った西日本古代国家縁辺部である和歌山県田辺地域における通過儀礼・葬送儀礼・遺跡評価に関する論文執筆を行い研究成果を公表した(舟橋京子2014「磯間岩陰遺跡出土人骨に見られる親族関係」『東アジア古文化論攷』III)。この中で、古代国家成立地域である畿内に近接した縁辺部であっても立地により情報・人の行き来が困難な地域では、国家前段階において古い通過儀礼・葬送儀礼が遅くまで残存する可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内の研究機関において古人骨資料調査を行い、通過儀礼の復元を行うとともに社会進化段階の評価の必要な葬送儀礼・被葬者間の関係に関する情報の収集もあわせて行えている。 加えて研究成果に関して学術論文として公表するなど一定の学術的成果を上げているため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き国内外の研究機関において先史・古代遺跡出土古人骨の資料調査を行うことによりデータを収集する。古人骨に関しては、形質人類学・歯科学的手法を用いて抜歯風習に関するデータを収集・分析する。加えて葬送行為に関する情報収集・分析を行い抜歯個体の社会的地位を明らかにし抜歯風習を用いた儀礼の復元を行うとともに通過儀礼と社会の時間・空間的変容の関係を明らかにする。これにより社会の複雑化と儀礼の抽象化のモデル化を行う。
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