研究課題/領域番号 |
24720356
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
寒川 朋枝 鹿児島大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (30526942)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 使用痕分析 / 細石刃石器群 / 九州 / 線状痕 / 摩滅 / 石器製作使用実験 / 作業対象物 / 装着方法 |
研究概要 |
九州内における細石刃の使用痕の様相を明らかにするため、鹿児島県・宮崎県・福岡県を中心に使用痕分析を行った。鹿児島県内において認められる、細石刃の片面に広く認められる密度の高い線状痕という特徴的な使用痕が、九州内でどのように分布しているかを把握することを目的としている。 データは現在精査中であるが概要を述べると、福岡県内の遺跡では使用痕は認められるものの、南九州においてみられるような特異な線状痕を確認することはできなかった。また、宮崎県下約10遺跡の分析では、鹿児島県下に認められる特徴的な線状痕を有する細石刃を確認することができ、その最北は五ヶ瀬川流域の遺跡であった。現段階では、恐らく南九州に限定的な使用痕であろうという想定に即した結果であるが、今後さらにデータを加えてその分布の北限を絞る作業が必要である。また、宮崎県下の遺跡でも特徴的な線状痕を有する細石刃は出土するが、その出土状況は鹿児島県下の遺跡と様相が異なる。鹿児島県下の遺跡では、特徴的な線状痕をもつ細石刃はほぼ全ての遺跡から出土しているのに対し、宮崎県下の遺跡ではそうした特徴的な使用痕をもつ細石刃が出土する遺跡と出土しない遺跡が近接する遺跡においても比較的明瞭に区分される傾向がうかがえ、その要因についてはデータと照合して詳細に検討を行う必要がある。 また、九州内の石材を用いた使用実験については、以前行った予備実験データを整理している段階である。九州内の石材による使用実験はこれまで行われておらず、今後他の石器群の使用痕分析を行う上でも有益な基礎データとなると思われる。そして、特に実際の出土細石刃と特徴が類似する使用痕については、再度詳細な実験を行い比較検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通りであるが、職務の大学構内遺跡発掘調査が長期に及び、資料調査に行く時間が取りづらかったため、九州内資料調査はやや遅れている。残すは熊本、長崎、佐賀であるが、今年度前半にはそれらも全て終了予定であるため、目的の達成には支障はないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も引き続き、九州内(特に熊本、長崎を中心に)細石刃資料の使用痕分析を行い、南九州で特徴的に認められる使用痕の北限を明らかにすると同時に、九州内の状況を把握する。 また、九州内の石材による使用実験も、引き続き条件設定を細かくするなどして再度実験を行い、南九州における特徴的な線状痕がどのような作業対象物・作業内容によって生じたものかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、主に使用痕分析のための資料調査(旅費)として使用する。九州内、熊本、長崎、佐賀、大分を予定している。また、研究成果発表の学会参加のための旅費としても使用予定である。最終的には調査報告書を作成する。 また、石器使用実験に用いる備品などの購入にも少額であるが使用する予定である。
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