本研究は、東北地方北部において10世紀から11世紀にかけて顕在化する環壕集落の形成過程とその特質を解明することを目的としている。具体的には、集落研究の基礎である遺跡動態と集落構造の分析を行い、一連の変化の中で環壕集落の把握を試みるものである。 研究の遂行にあたり、実際に現地に赴いて環壕集落の踏査を実施するとともに、発掘調査報告書から東北地方北部の奈良・平安時代遺跡のデータを収集した。収集したデータの内容は、遺跡の位置情報、継続性、時期別住居数、住居面積など多岐にわたる。 分析の結果、従前の研究では一括して動向が把握されていた地域においても、遺跡数の変動傾向や遺跡の継続性などには地域的な差異が認められ、環壕集落成立に至るまでの地域的な歩みの多様性を確認した。また、特定の遺跡群において、9世紀から11世紀にかけての集落構造の変遷を具体的に検討し、環壕集落成立までに段階的な集落構造の変化が認められることを明らかにした。
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