研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は、日本が国際連盟委任統治領として1922年から1945年にかけて統治した南洋群島(現在のミクロネシア地域にあたるパラオ、マリアナ諸島、ミクロネシア連邦およびマーシャル諸島を含む範囲)に残る、日本統治時代の遺構および第二次世界大戦に関連する戦争遺跡を調査し、その実態を解明することである。特に同地域に多数存在する沈没艦船などの水中文化遺産の把握に重点をおく。平成24年度はパラオ共和国において陸上・水中の関連遺産の総合的調査を実施した。具体的には、パラオ港内に沈む沈船に加え、水中にある航空機についても、その保存状況を確認するための潜水調査をおこなった。またバベルダオブ島およびコロール島に残る日本統治時代の遺構・戦争遺跡のジェネラル・サーベイをおこなった。さらに、日本統治時代を体験した現地住民からの聞き取り調査も実施した。また現地の文化財保存に携わる芸術文化局歴史保存事務所のスタッフとも情報交換をおこなった。またミクロネシア連邦ポンペイ州においても予備的な調査を実施した。具体的には、ポンペイ州のソケース島およびレンゲル島に残る戦争遺跡のジェネラル・サーベイと、コロニア市内に残る日本統治時代の遺構の調査をおこなった。さらに研究成果の発表のため、2013年1月には第7回世界考古学会議(ヨルダン)に出席し、「Remembered Landscapes of War and Colonization: A case Study in Palau」と題するポスターセッションによる発表をおこなった。また2012年11月には2012年度東南アジア考古学会研究大会(東京)にて「パラオにおける水中考古学調査」と題して研究発表をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度は、おもな調査対象地域であるパラオにおいて1回の現地調査を実施したのに加え、周辺地域としてミクロネシア連邦ポンペイ州でも予備調査を1回実施し、現地調査の進捗状況は順調といえる。また学会発表は国内1件(2012年度東南アジア考古学会研究大会、2012年11月)および海外1件(第7回世界考古学会議、2013年1月)をおこない、その研究成果を国内外に発信することが出来た。本年度中は、学術論文の発表等をおこなうことはできなかったが、現在、上記学会発表の成果を論文集として出版する予定であり、次年度の出版を目指している。以上の観点から、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
今後もパラオにおける戦争遺跡および日本統治時代遺構のジェネラル・サーベイを継続するが、特にH25年度にはバベルダオブ島にあった日本人入植地の調査に重点を置きたい。これらの入植地についてはほとんど情報がなく、現地当局もこれまで調査を実施してきたが、日本側の協力を求められた対象でもあった。そこでH25年度は現地歴史保存事務所と協力し、これらの遺跡の現地調査を実施する予定である。また周辺地域の比較調査として、次回はサイパンにおける予備調査を実施する予定である。パラオにおける戦争遺跡および日本統治時代遺構のデータも蓄積しつつあるので、順次整理をおこない、最終年度であるH26年度には日・英文の報告書としてとりまとめる予定である。
物品費 200,000円(デジタルビデオカメラ100,000円、デジタルビデオカメラハウジング100,000円)旅費 800,000円(パラオ現地調査14日間400,000円、サイパン現地調査7日間200,000円、東京出張2日間50,000円×4回)人件費・謝金 100,000円(データ整理アルバイト 6,000円/日×16日間)その他 300,000円(ボート借上げ30,000円/日×8日間、自動車借上げ10,000円/日×6日間)
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