本研究は弥生時代の青銅器を主な分析対象として、日本列島における青銅器の受容と祭祀に関する調査研究を行った。 最終年度には三遠式銅鐸と近畿式銅鐸を比較し、これまであまり注目されてこなかった三遠式銅鐸の大型化について調査した。その中で、明治10年(1887)にアメリカでH=S=マンローにより学会誌に紹介された銅鐸2口のうち、大型の1口が現在クリーブランド美術館所蔵の銅鐸であると判断するに至った。このことについて、「H=S=マンローの銅鐸」として論考にまとめた。当該銅鐸は三遠式銅鐸最大の個体でありながら、これまで日本ではあまり紹介されておらず、詳細な報告もないことから、知名度の低い銅鐸だった。このたび、マンローによってアメリカで最初に報告された銅鐸であり、最初に成分分析された銅鐸であると見なされた。学史的に記念すべき銅鐸であり、三遠式銅鐸の大型化と近畿式銅鐸との並行関係や分布の意味を考える上で重要な個体であることが明らかとなった。 当研究を通じて、当初計画に比較すると研究対象と範囲は、時間的制約などの諸条件によって、幾分限られたものとなった。しかしながら、基礎的な整理にくわえ、各地の銅鐸埋納の状況や大型化、大陸からの文物の受容と型式変化についての考察をまとめることができた。
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