平成27年度は、引き続き古墳出土甲冑の資料調査を行った。これにより、革綴短甲から鋲留短甲にいたるまでの編年の指標となるデータを得ることができた。 資料調査により取得したデータに基づき、甲冑の部材の配置や大きさ、組み合わせ技法の組み合わせを検討し、甲冑の型式学的な変遷を明らかにした。またそうした変遷観と、短甲・冑・頸甲の組み合わせを検討することで、古墳時代前期から中期に至る甲冑を12段階に区分した。 これらの編年に基づき、同一の埋葬・埋納施設から複数の甲冑が出土した場合の製作順序と配置箇所、組み合わせの優劣、金銅装の有無といった要素に相関性があるのかどうかを検討した。その結果、甲冑の組み合わせや金銅装の有無でより優れた甲冑は、相対的に古相のものであるという「古相優勢」の原則があることが明らかになった。また、被葬者により近い位置に配置された甲冑が相対的に古相であることが多く、また組み合わせなどの上でも優勢であるという「近接古相」「近接優位」の原則があることが明らかとなった。 こうした事象は、早くに作られた甲冑により高い社会的な価値があり、そうした原則が甲冑の製作・授与者だけでなく、甲冑の保有・副葬者にも通底していたためと考えられる。そのことは、器物を媒介とした関係の構築においては、関係の更新によってはその価値付けが強化されることは少なく、むしろ最初の関係の構築こそが有力者間において重要であったことを反映していると考えられる。そうした有力者間の関係を反映したものとして、甲冑の授受が行われていたと考えられる。モノの履歴の違いに注目することで、副葬品構成の意義を解きほぐす端緒が開かれたと考えられる。 これらの結論については、成果報告書を作成・印刷し、関係機関等に配布をおこなった。
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