研究課題/領域番号 |
24720371
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山下 亜紀郎 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60396794)
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キーワード | 流域 / 水需給 / 地下水 / 灌漑用水 |
研究概要 |
前年度に作成した,日本全国の一級水系109流域の水需給に関するデータベースをもとに,109流域の水需給ポテンシャルを定量的・相対的に比較分析した。その際1980年代と2000年代のデータを用いて時系列的な観点からも考察した。そしてそれらによって,流域の水需給ポテンシャルとその変化にみられる地域的傾向を明らかにした。その結果,流域特性や水需給比には明確な地域性があり,流域の水需給ポテンシャルを規定する地域的背景にはいくつかのパターンがあることが明らかとなった。具体的には以下の通りである。相対的に水需給比の高い流域は,三大都市圏を中心としながらも,東北から関東,中部地方の太平洋側,さらに近畿,中国,四国地方の瀬戸内海側から九州地方北部など全国に広く分散しており,その要因についても水資源賦存量の小ささに規定されるタイプ,都市用水需要の大きさに規定されるタイプ,農業用水需要の大きさに規定されるタイプ,その中間あるいは複合的なタイプといったように地域的に多様であることが明らかとなった。この成果は,地理情報システム学会の学術誌『GIS-理論と応用』に論文として掲載された。 次に,水需給ポテンシャルからみて相対的に水需要の多い流域として,兵庫県の加古川流域と広島県の芦田川流域を取り上げ,現地にて資料収集および景観観察等の調査を実施した。これらの流域では,少雨地域として限りある水資源を効率的に利用するための,ため池や用水路等の灌漑施設が整備されたが,受益地域の宅地化が進展していることが分かった。次年度には,緊急時における灌漑用水の多用途への水利転用に関する議論も視野に入れながら,非農家としての都市住民も含めた灌漑施設の保全や活用の方法を考察するため,関係機関への聞き取り調査等を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流域水需給データベースについては,すでに完成し,それを用いた地域分析の成果も学会誌で公表した。事例流域を選定した詳細な現地調査については,若干遅れ気味ではあるが,対象地域の地理的概要の把握や,具体的な考察に必要な調査項目についての検討は済んでいるので,次年度に現地調査を行い,当初の研究目的を達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
水利に関する詳細な現地調査の対象である,兵庫県の加古川流域と広島県の芦田川流域において,灌漑水利施設の維持管理の実態を把握する。その上で,緊急時における灌漑用水の多用途への水利転用について,ローカルかつアドホックではあるが現地の実態に即した実現可能性の高い方策を提案する。
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