本研究は,戦後日本の都市計画の本質としての「近代化」が地方都市をいかにして変えたのか,北陸新幹線佐久平駅周辺を事例に分析したものである。地方都市では新幹線建設がもたらす近代化の幻想を背景に,産業振興と計画技術の両面で中央主導の近代都市モデルがまず受容された。このモデルをめぐって,土地の供給側である地権者は,産業構造の転換や農家の高齢化が顕在化した1990年前後を境に,農地保全から開発志向へドミノ的に転換し,需要側である商業資本は,90年代の自由主義的な都市政策によって地方都市郊外へと進出した。こうした両者の戦略と新幹線建設が空間的かつ歴史的に一致した点に誕生したのが近代都市「佐久平」であった。
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