2012年度にインドのジャンムー・カシミール州ラダックにおいて実施したD村落に属する193世帯の農耕地に関する土地被覆調査,作付調査をArcGIS上でのデータ化をおこない,更にこれら現在の地籍図と,100年前のイギリス統治下で作成された地籍図との比較をおこなうために投影法を変化して1つのデータセットに統合した。 こういった土地被覆の傾向に関して,地形との関連性を考察するためにステレオ合成ソフトSummit Evolutionを用い,2枚のGeoeye衛星画像(解像度50cm)を合成して高精度の三次元標高モデルを作成した。 これら2つのデータに基づいて,道路の開通や家屋の立地という社会的な要素や農耕地の傾斜などや日当たりなどの地形に起因する要素が村落における土地被覆の変化にどのような影響を及ぼしているのかを考察した。 D村落では,家屋から離れた農耕地や道路からのアクセスの難しい農耕地ほど放棄される傾向があり,農業の縮小が進んでいた。家屋に近い農耕地でも,傾斜などのために不利な条件にある土地では土地利用の変化がみられ,労働力を必要としない森林や果樹への転換がみられた。 これらの村落における土地利用と,ラダックを取り囲む社会経済的な要素,すなわちインド政府による穀物などの配給制度やインド-パキスタンの紛争,観光業の隆盛などと関連付けて物資の移動や人の移動に関して考察をおこない,その成果の一部を2013年8月に開催された国際地理学会にて「Significance of verticality in current mountain agriculture and land use: Case from a Ladakhi village in northern India」という題目で発表した。
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