最終年度は,ドラッグストアの立地動向に関する立地シミュレーションや需給バランスの測定に向けて,愛知県・静岡県・岐阜県・三重県を中心とする東海地方における店舗のGISデータベースを作成するとともに,いくつかの地方都市において高齢者に対するドラッグストアの需給バランスの計算を行った。さらに,日経MJにおいて掲載されたドラッグストアおよび医薬品に関する新聞記事のデータベースを作成し,「超高齢社会」をキーワードとしたドラッグストア業界の動向を整理し,上記の作成した店舗のGISデータベースと突き合わせて出店動向の考察を行った。 以上の結果より,本科研に関する研究成果は,以下の様にまとめられる。まず,業界誌や新聞記事からドラッグストア企業の動向を整理したことで,超高齢化社会を迎え医療費高騰の懸念から「セルフメデュケーション」が求められる現在の日本において,小売業がこうした状況にどのように対応し,また今後どのような役割を果たすことができるかを地理学の視点から検討することがきでた。具体的には,都市規模や高齢者の人口分布,各種医療施設の分布に合わせて,ドラッグストア企業が出店戦略を対応させていることが明らかになった。 次に,店舗網の拡大や新業態の立地が都市空間上においてどのように描き出されるかを,空間(水平的視点)と流通チャネル(垂直的視点)の両面からGISを用いて検討した結果,上記で示された出店戦略に基づき,空間についてはいわゆるドミナントエリアの拡大,流通チャネルについてはM&Aによる企業グループの拡大,というそれぞれの点で整理できることが明らかとなった。 上記2つの結果については,とりまとめて学術雑誌に投稿準備中である。しかしながら,地域住民の医薬品に関する利用状況・購買行動に関しては地域住民との調整などが進まず実施することができなかった。そのため,本科研の結果に基づき今後行っていく。
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