2015年度は戦後以降の日本の河川敷空間をめぐる政治的状況および都市の河川敷利用の実態を明らかにするための取りまとめ作業を行なった。なお、本年度は本課題とともに、科学研究費補助金(若手研究(B))「都市の河川敷の利用をめぐる社会・政治地理学的研究」 (研究課題番号:15K16891)の研究課題を並行して実施した。 本年度の成果については、まず同志社大学人文科学研究所発行『社会科学』第45巻第3号に「戦後,集団移住へ向けた河川敷居住者の連帯:広島・太田川放水路沿いの在日朝鮮人集住地区を事例に」が掲載された。本論文では、戦後広島に存在した河川敷に形成された在日朝鮮人集落を事例に、その内部の社会状況や建物構成を明示し、集団移住を可能とさせた、居住者の連帯要因にアプローチした。なお、行政との交渉過程を取り上げた本論文の続編が、2016年度刊行の『社会科学』第46巻第1号に掲載予定である。また、2015年5月に開催された人文地理学会政治地理研究部会第15回研究会において、「戦後都市における河川敷居住とその立ち退き問題」の報告も行なった。ここでは、広島市太田川と熊本市白川、静岡市安倍川を事例に、特に河川敷居住者の立ち退きを巡る状況とその後の再定住のあり方にアプローチした。このほか関連業績として、2015年6月に開催されたカルチュラル・タイフーン2015において、「「復興都市」を問いなおす―「阪神・淡路大震災」後の神戸長田から―」という共同発表も行なった。ここでは神戸市長田の新湊川沿いの河川敷空間の利用のあり方を取り上げた。
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