本研究は、インド洋海域のネットワークをオマーン移民の視点から解明することを目的としている。オマーン移民は、18世紀以降東アフリカ沿岸部に植民地を築き、英国支配下におかれた後も一定の地位を維持していたという点、さらには1970年以降その多くが本国オマーンに帰還している点においてユニークな存在である。にもかかわらず、これまでインド洋交易研究においてもオマーン研究においても、その存在は等閑視されてきた。本研究では、インド洋西域における交易の主要な担い手であったオマーン移民のネットワークの歴史的展開と現状を人類学的観点から明らかにする。 年度前半は、過去2年にわたりおこなってきた歴史教科書の分析と、昨年度の現地調査で得たデータを合わせ、日本中東学会にて成果報告をした。 8月と3月にそれぞれ2週間程度の現地調査(オマーンの首都マスカット)を実施し、現地の歴史学者らと意見交換をしたり、年に一度開催されるブックフェアにてアラビア語文献を収集した。そのかたわら、12月にはマレーシアにて国際学会発表、さらには年次前半に中東学会にて発表した内容を英語論文として『日本中東学会年報』に投稿し、受理された。
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