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2012 年度 実施状況報告書

代理懐胎の人類学:英国における代理懐胎の実態と当事者の語りの研究

研究課題

研究課題/領域番号 24720388
研究種目

若手研究(B)

研究機関金沢大学

研究代表者

島薗 洋介  金沢大学, 医学系, 研究員 (40621157)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード文化人類学 / 医療人類学 / 代理懐胎 / 生命倫理
研究概要

近年、生殖補助医療が急速に発展・普及している。体外受精およびその派生技術の使用は、多くの不妊カップルに恩恵を与えて来た。しかし、それに伴い、卵子売買や商業的代理懐胎など、身体の医療資源化・商品化といった問題も生じている。とくに、女性の身体の生殖機能の資源化・商品化を含む代理懐胎は、さまざままな倫理的、法的、社会的問題を投げかけている。
こうした状況を念頭に、本研究では、商業的代理出産が広く行われている国々の状況を比較しながら、非商業的代理懐胎に限って認められているイギリスでの代理懐胎の実態を明らかにすることを目的とする。具体的には、イギリスにおける代理懐胎をめぐる表象の分析を通じて、同国における代理懐胎に関する文化的認識や実践の歴史的変遷を辿りつつ、依頼者や代理解体者などの当事者の視点から英国における代理懐胎の特質を解明することを目指している。
3年計画の初年度にあたる平成24年度では、他国における代理懐胎に関する研究の整理やイギリスにおける代理懐胎をめぐる表象の分析を主に実施した。また、イギリスでの現地調査を1度実施した。現地調査では、文献や映像資料の収集を行うともに、英国の研究者との意見交換を行い、今後の調査の進め方に関する助言を得た。
これらの研究によって、英米における代理懐胎をめぐる倫理学的言説の構図とその問題点が浮き彫りになった。その成果の一部を生殖テクノロジーとヘルスケアを考える研究会の公開報告会「グローバル化時代における生殖技術と家族形成」で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究計画で予定していた先行文献研究に関しては、当初の予定どおりに遂行することができた。また、英国の代理懐胎にかんする言説分析のための資料の入手と整理を行うことができた。それらの分析成果の一部も、すでに研究会等で発表するなどして、有意義なフィードバックを得ることができた。ただし、調査計画では、①平成24年8月、②平成25年2月、2度行う予定であった英国での現地調査については、実際に実施したのは一度に留まった。
平成24年度に二度目の現地調査を行えなかった理由は二つある。まず、年度末に金沢大学から大阪大学へと異動したために、それにともなう様々な作業に時間を咲かなければならなかった。次に、平成25年度の2月に、筆者が関わっていた最先端・次世代型研究開発プログラム「グローバル化における生殖技術の市場化と生殖ツーリズム:法的・倫理的・社会的問題」の研究業務に異動前に一定のめどを付けるため、それまで筆者が関わっていたインドでの代理懐胎に関する現地調査を優先する必要があった(平成25年2月25日から3月15日実施)。
ただし、研究申請の段階で、金沢大学の研究員としての任期が残り2年であったため、研究期間中の異動の可能性も織り込み、当初から3年で研究を実施するよう計画していた。そのため、研究計画全体には大きな支障を来すものではない。現段階では、3年間期間中に本研究を予定通り完遂するのに十分な進捗状況である。

今後の研究の推進方策

平成24年度の研究では、主に代理懐胎に関する先行研究の整理を行うとともに、これまでの欧米圏における代理懐胎をめぐる生命倫理学的議論の分析を主に行ってきた。
平成25年度以降、これまでの言説分析の成果を継続的に発展させていく。扱う対象をテレビや新聞などの主要メディアへと広げていくと同時に、トピックとしても、これまで主に想定して生きた異性愛の不妊カップルによる代理懐胎の依頼から、現在英国内でも関心が高まっている同性愛カップル(とくにゲイガップル)による代理懐胎の依頼をについても取り扱うこととする。
それとともに、英国での代理懐胎に関わる当事者への聞き取り調査をも実施していく予定である。
英国での現地調査を円滑に進めるために、オックスフォード大学での客員研究員の資格申請を行い、同大学で研究倫理審査を受ける。その上で、代理懐胎の斡旋団体やゲイペアレンティング推進団体とコンタクトを取り、団体の関係者、代理母や依頼者への聞き取りを行う。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は、先行研究や関連文献の収集のために使用するコンピュータや書籍の購入に予算の多くを費やした。このため、物品費が予定より多くなった。しかし、すでに初年度で主な物品を揃えることができた点を考慮し、平成25年度以降は、旅費を優先して研究費を使用していく予定である。
具体的には、平成25年度には2度の現地調査の実施を予定している。現地調査の実施のために、5~600,000円程度の予算を使用する(各250,000~300,000円)。残りは、主に、調査データの整理のための人件費を使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Becoming a surrogate online: "Message board surrogacy" in Thailand2013

    • 著者名/発表者名
      Yuri Hibino and Yosuke Shimazono
    • 雑誌名

      Asian Bioethics Review

      巻: 5(1) ページ: 56-72

    • DOI

      10.1353/asb.2013.0004

    • 査読あり
  • [学会発表] 生殖ツーリズムをめぐる法的・倫理的問題2013

    • 著者名/発表者名
      藤田真樹・日比野由利・島薗洋介・中村裕之
    • 学会等名
      第83回日本衛生学会
    • 発表場所
      金沢大学鶴間・宝町キャンパス
    • 年月日
      20130324-20130326
  • [学会発表] インドの商業的代理懐胎における法的・倫理的問題2012

    • 著者名/発表者名
      藤田真樹・日比野由利・島薗洋介・中村裕之
    • 学会等名
      第10回日本予防医学会学術総会
    • 発表場所
      広島大学広仁会館
    • 年月日
      20121124-20121125
  • [学会発表] 生殖補助医療と身体の商品化をめぐる倫理的・社会的問題

    • 著者名/発表者名
      島薗洋介
    • 学会等名
      公開報告会「グローバル化時代における生殖技術と家族形成」
    • 発表場所
      立命館大学衣笠キャンパス
    • 招待講演
  • [備考] インドの代理出産と生殖ツーリズムにおける火急の法的課題

    • URL

      http://saisentan.w3.kanazawa-u.ac.jp/image/houtekikadai_20121025.pdf

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公開日: 2014-07-24  

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