研究課題
本研究は、イギリスの代理出産の特質について人類学的な観点から明らかにすることを目的としている。前年度は、イギリスの代理出産をめぐる法制度とそれをめぐる倫理学的な言説の調査を行った。本年度は、前年度に続き、イギリスの代理出産をめぐる法制度とそれをめぐる倫理学的な言説の調査を行い、その結果を比較的な視点からその特徴を検討するとともに、イギリスの代理出産の現状ついても、資料を収集した。その結果、イギリスにおける非営利の代理出産斡旋組織の活動の一部が明らかになった(代理母の志願者と依頼者をマッチメイキングするためのイベントの開催など)。しかし、これらのイギリスにおける代理出産斡旋組織は全ての依頼者のニーズを満たしておらず、海外(特にインド)で代理出産を依頼するケースが増えていることが明らかとなった。上記の調査の結果にもとづき、イギリスの代理出産の制度・法整備の過程を、アメリカのそれと比較し、その特徴を検討する作業も行った。これに加えて、現在、商業的代理出産が行われており、インドのガイドラインや法案と比較した。その結果、イギリスの代理出産の制度は、2000年代初頭のインドの代理出産の制度化のモデルとなったと考えられること、しかし、インドではその後、代理出産を合法化した一部の州の制度をモデルとする方向にシフトしたことが明らかとなった。こうした比較研究の成果の一部をシンポジウムの発表で公開した。
3: やや遅れている
・新たに大阪大学に着任し、研究や教育活動の環境の変化があったために、予定していた調査の一部を十分に行うことができなかったため。・当初の研究計画では、代理出産に関わる当事者の語りを中心とした研究を行う予定であったが、代理出産の当事者の語りを十分に収集するのにはさまざまな障壁があることが明らかとなった。
当初の研究計画では、代理出産に関わる当事者の語りを中心とした研究を行う予定であったが、代理出産の当事者の語りを主眼とした研究では、十分な研究の深度を得られないと判断した。今後、より巨視的な観点からイギリスの代理出産にかかわる法制度や代理出産の倫理をめぐる言説を他国のそれと比較することで研究を進めて行きたいと考えている。また、特に、イギリスにおけるLGBTペアレンティングと代理出産に関する言説を主に取り上げ、調査を進めて行くつもりである。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Asian Bioethics Review
巻: 5(4) ページ: 331-334
10.1353/asb.2013.0063
Environmental Health and Preventive Medicine
巻: 18 ページ: 477-484
10.1007/s12199-013-0345-7