本研究では、東京での未婚・既婚男女によるフォーカスグループデータの分析から、1)現代日本社会においても母親業は根強く重視されており、2)そのため女性は「我慢を重ねて」でも社会が要求する良い母親の文化的基準に達しようと努力しており、また頑張るべきであると考える傾向にある、3)また、母子接触を重視する価値観から、妊娠・出産・子育て期を通じての継続した女性の労働にはつながりにくい文化的仕組みがある、という知見がもたらされた。今後の女性労働力率の上昇のためには、母親の継続した市場労働を、「子供にとって良いことだ」とする価値観のシフトが必要になるであろう。
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