研究課題/領域番号 |
24720396
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
村山 絵美 武蔵大学, 人文学部, 助教 (60582046)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 沖縄 / ユタ / グリーフワーク / シャーマニズム / 民間巫者 / 口寄せ |
研究概要 |
本研究は、沖縄のシャーマンであるユタによって執行される「口寄せ」などの死者儀礼が、依頼者のグリーフワーク(喪失の悲嘆から立ち直るプロセス)にもたらす影響を検討することである。 本年度は、6月と9月に沖縄本島南部地域にてフィールド調査を実施した。調査では、ユタや依頼者へのインタビュー調査、遺族による慰霊実践の参与観察を行った。本研究の第一の目的は、ユタと依頼者とのやり取りを通して、グリーフワークにおける民俗知がどのように生成されているのかを検討することにある。本調査によって、ユタが関与した依頼者のグリーフワークの経験をオーラル・ヒストリーの記録として作成することができた。その研究成果の一部は、論文として発表している。 また、本研究第二の目的は、ユタの「口寄せ」に関連する事例の収集と分析を行い、ユタの「口寄せ」の歴史的変遷を整理することにある。この点について本年度では、都内と沖縄の各図書館にて文献調査を行った。沖縄ではフィールド調査の機会を利用して、県内の郷土資料室や琉球大学付属図書館などで新たな資料の発掘に務めた。また、収集した資料は、デジタル化して整理し、ユタの「口寄せ」に関する基礎データ作成のための準備作業を行うことができた。 本研究の目的は、民俗が喪において果たしてきた役割、ひいては遺族のグリーフケアにおいて民俗が果たしてきた役割を再検討することにあるが、上記の調査研究を通して、民俗知の現代医療への援用や遺族支援のあり方を考えるための礎をなすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の達成度は「おおむね順調」と評価することができる。その理由として、次の三点が挙げられる。 第一に、本年度の研究成果を論考として発表できた点である(「沖縄のシャーマニズムとグリーフワーク」『武蔵大学人文学会雑誌』第44巻3号、pp373-408)。本論考は、ユタの依頼者へのインタビュー調査の成果をオーラル・ヒストリーの手法を用いてまとめたものである。グリーフワークにおいて、ユタが依頼者に関与する範囲や、ユタの「語り」が依頼者に受容されるまでのプロセスを依頼者のライフヒストリーを交えながら明らかにした。 第二に、おおむね予定通りにフィールド調査を実施できた点である。本年度は6月と9月に沖縄本島にて現地調査を実施した。具体的な調査項目としては、2名のユタへのインタビュー調査、5名のユタの依頼者へのインタビュー調査、遺族による慰霊実践の参与観察などが挙げられる。フィールド調査では、ユタや依頼者の基礎データを収集し、継続的調査を行うためのラポールを構築することができた。 第三に、予定通り文献調査を実施することができた点である。本年度は、都内と沖縄の各図書館で文献調査を実施した。沖縄では、フィールド調査の機会を利用して、沖縄県内の郷土資料室などで新たな資料発掘に務めた。調査施設は、沖縄県立図書館、浦添市立図書館沖縄学研究室、琉球大学付属図書館、沖縄県立公文書館が挙げられる。都内での資料収集にあたっては、書店・専門古書店の他に、国立国会図書館、武蔵大学図書館、総合研究大学院大学図書館、法政大学沖縄文化研究所において調査を実施した。文献調査では、ユタの「口寄せ」に関連する事例の収集と分析を行い、ユタの歴史的変遷を確認することができた。 以上の調査研究を通して、沖縄のユタによる「口寄せ」とグリーフワークとの関わりを明らかにすることを目的とした本研究課題の端緒を開くことができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策として、昨年度に引き続き、ユタの「口寄せ」に関する文献調査とフィールド調査を並行して実施する予定である。フィールド調査では、本年度はユタの依頼者への聞き取り調査を中心に行う。また、昨年度のフィールドワークで聞き取り調査を実施した依頼者に対しても追加調査を行う。特に、依頼者には、ユタのもとを訪れた後の反応や変化に関して詳細な聞き取り調査を実施する。具体的な出張内容は、以下の通りである。出張①(平成25年9月上旬の14日間)では、「口寄せ」の依頼者への聞き取り調査と、ユタの「口寄せ」の参与観察を実施する。出張②(平成25年2月下旬から3月上旬の10日間)では、これまで聞き取りを行ったユタや依頼者への追加調査を行う予定である。 文献調査においては、普段は都内の図書館で調査を行い、沖縄の出張期間中には県内の図書館で調査を行う予定である。本年度は、特に東京都板橋区にある桜井徳太郎文庫において重点的に調査を行う。本施設は、日本のシャーマニズム研究の権威である桜井徳太郎の蔵書ならびにフィールドノート・聞き取りテープなどの一次資料が手つかずのまま多数所蔵されている。桜井は、1960年代後半から70年代初めにかけて、ユタの調査を行っているが、この時期はユタの「口寄せ」が興隆した時期でもある。書庫には当時の資料が未整理のまま残されている状態であり、ユタの「口寄せ」の歴史的変遷を考える貴重な資料となるため、「口寄せ」に関する一次資料の発掘と整理を行いたい。 なお、本年度は上記の調査に加え、昨年度から収集した膨大な資料の整理を行う。収集したデータを分類し、「口寄せ」に関する基礎資料を作成する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究費の使用は、①フィールド調査代、②文献資料調査代(図書購入、複写代)、③資料のデジタル化代に大別できる。 ①フィールド調査では、平成25年9月と平成26年2月の二回に分けて計20日間ほど沖縄本島に滞在し、聞き取り調査を実施する。調査においては、交通費・宿泊費・日当が必要不可欠である。 ②文献資料調査では、所属研究機関に所蔵されている図書が限られているため、本研究課題の遂行において図書購入が必要となる。また、図書館や調査地などで、または所属機関の図書館を経由して、膨大な資料を複写する必要がある。さらに、複写資料の取り寄せ送料、調査時に収集した資料を送る際の宅配便利用料、図書購入の際の送料が必要となる。 ③収集した資料をデジタル化する際の経費が必要となる。コピー資料は応募者自身でデジタル化するが、文献(冊子)資料については、専門業者にスキャニング作業を委託する。また、収集データの保存用のため、記録メディア(HDDなど)の購入が必要となる。
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