研究課題/領域番号 |
24720401
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
山内 由理子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (50626348)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / オーストラリア / 文化人類学 / 歴史 / 日系人 / 先住民 |
研究概要 |
平成24年度においては、東京及び和歌山県で文献、聞き取り調査、オーストラリアのパース、ブルームに置いて聞き取り調査及び参与観察、シドニー及びアデレードにおいて文献調査を行った。 東京では1箇月前後、東大図書館、海外移住資料館等を中心に北部オーストラリアへの日本人移民の歴史的背景や、移住政策等を調べ、また、ミキモト・ライブラリーを中心に1960年代以降の日系企業による北部オーストラリアでの真珠養殖業を調査した。この調査は北部オーストラリアへの日本人移民の国家レベルでの時代背景、更に、1960年代以後の北部オーストラリアと日本との繋がりを明らかにした。 和歌山県では、一週間ほど和歌山市市民図書館において、和歌山県から北部オーストラリアへの移民に関する市町村レベルでの記録を探り、その後、紀南地方で一週間ほど、町役場や図書館所蔵資料調査、移民の親族や移住経験者への聞き取りを行った。この調査により明らかになったのは、市町村レベルでの移住の日常性と意義、移民現象終了後の市町村や個人レベルでの繋がりの継続性である。 オーストラリアにおいては、パース、ブルームに四日ほど滞在し、現地の日本人の子孫への聞き取り調査及び日系人コミュニティのイベントでの参与観察を行った。双方のケースで日系人である意味の今日的模索が行われており、今後の調査に重要な示唆を与えた。また、2013年3-4月にシドニー及びアデレードで一週間ほど、日系人コミュニティと重要に関わる先住民コミュニティの歴史につき、文献調査を行った。 以上の調査内容はフリンダース大学歴史学セミナー、アデレード日豪友好協会セミナーで発表され、編著『世界の中のオーストラリア』に一章収録、現在編集中の『オーストラリア先住民学(仮)』にも収録予定である。更に、以上の知見を踏まえてカナダ人類学会で発表、オーストラリア学会、日本文化人類学会ではコメント等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の当初の計画は日本及びオーストラリアで文献調査を行い、北部オーストラリアへの日系人移民の歴史的背景を日本とオーストラリア双方の文脈から探ることであった。 日本での東京、和歌山における図書館や市町村の文書舘でも文献調査、及び移住経験者や移民の親族からの聞き取り調査に関しては、ほぼ予定通り行うことができ、国や市町村レベルでの移民の歴史的背景を探り、更に移民終了後の日豪の繋がりについて明らかにすることができた。しかし、オーストラリアでの文献調査に関しては、当初の1箇月の予定であったものが大幅に削られ、シドニー、アデレードでの一週間ほどの背景調査に留まった。なお、パースとブルームにおいては時間的状況的制約が大きく、文献調査を変更して聞き取り及び参与観察を行い、短期であったが今後の研究への重要な洞察が得られた。 この変更の大きな理由は、平成24年度10月付けで東京外国語大学にフルタイムで採用されたため、平成24年度9月から3月まで、日本を離れることが非常に困難となったためである。授業のほか、新設コースの唯一の常勤教員という立場に置かれたため、大学業務等により東京に滞在せざるを得ず、オーストラリアでの現地調査は予定を変更せざるを得なかった。 調査結果の発表に関しては、9月以前の調査でのデータをまとめることで、カナダ人類学会、フリンダース大学のセミナーなどで発表を行い、本の二章を執筆(一生は出版済み、もう一章は収録予定)であり、かつ更に一本執筆中という状況にあり、当初の予定の70%は達成できたと認識している。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者(単独)の就業状況の大幅な変化のため、オーストラリアにおける現地調査計画に大幅な変更が行われる。当初は平成24年度にブルーム、パースにおいて1箇月ほどの文献調査、平成25年度にブルームにおいて5ヶ月ほどのインタビューと参与観察を中心とした現地調査を行い、平成26年度に平成24,25年度で収集したデータの分析、及び結果に基づいての論文執筆や学会発表を行う予定であった。しかし、東京外国語大学の常勤職への赴任により、一年間の大きな部分日本を離れることが困難になったため、オーストラリアにおける現地調査は平成25・26年双方、大学の休業期間に分割して行うこととする。具体的にはブルームにおけるインタユー及び参与観察調査は平成25,26年度の8-9月の大学の夏季休業期間に1-2ヶ月ずつ行い、また、パース及びブルームにおける文献調査は、7月、2月、3月等に一週間程ずつ、大学の業務帰還の合間に行う。また、北部オーストラリアにおいて日系人コミュニティに関わりの深い先住民コミュニティの調査も背景認識として必要なため、シドニー、キャンベラ、アデレードにおいても、7月、2月、3月に数日の予定で文献調査を行う予定である。 収集したデータの分析及び学会発表や論文執筆は、当初の計画では平成26年度にまとめて行う予定であったが、以上のような状況変化のため、平成25年度、26年度の夏季の現地調査の終了毎に行い、随時発表していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は7月末ー9月半ばにオーストラリアにおける文献及びフィールドワーク調査を行う。7月末から8月の頭までシドニー、キャンベラ、アデレードを廻り、図書館においてオーストラリアの日系人及び北部オーストラリアの先住民と日本人移民とのかかわりに関して文献調査を行う。文献資料は各地に分散しているため、各地域において2-5日ずつの滞在を企画している。その後、8月頭から9月半ばまで、ブルームに於いて、日本人移民とその家族、子孫を対象に参与観察とインタビュー調査を行う。ブルームにおいては、ノートル・ダム大学の学生他長期滞在者用施設に宿泊し、全期間を調査期間として、30人ほどにインタビューを行うことを目標とする。インタビュー内容は彼等のライフヒストリー、日系人としてのアイデンティティ、エスニック間関係の経験などである。 9月のブルームでの調査終了後にも2-3日の予定でパース、アデレード、シドニーで文献調査の補足を行う。 また、2014年の2月、3月にも夫々5-7日ほどの予定でシドニー、アデレード、キャンベラ、パース、ブルームで文献調査を行う予定である。各地での滞在は夫々2-3日程度である。調査内容は、シドニー、アデレード、キャンベラにおいては大学図書館、州立古文書舘、国立図書館、国立古文書間などで北部オーストラリアにおける先住民コミュニティの歴史的社会的状況や日本人をはじめとした彼らとアジア人との関わりについて調べる。パース、ブルームにおいては州立図書館や古文書館、歴史博物館などで西オーストラリア州や町単位での日本人移民の歴史や先住民を初めとしたたのエスニックグループとの関係について調査を行う。 その他の期間は、東京においてデータのまとめと分析を行い、7-9月の調査以降に、『移民研究年報』『Journal of Japanese Studies』等を対象とした論文執筆を目指す。
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