平成26年度においては、平成25年度に実施できなかった西オーストラリア州ブルームにおける現地調査を行った。8-9月の間に約2か月現地に滞在し、日本人移民とオーストラリア先住民の血を引く人々約20人ほどに、彼らの家族の歴史とアイデンティティを中心にインタビュー調査を行った。また、日系人以外のアジア系移民とオーストラリア先住民の混血の人々数人にも、ブルーム社会における日系人移民の位置づけや歴史的社会状況に関してインタビュー調査を行った。 平成26年度の集中的インタビュー調査より浮上してきたのは、研究対象である日本人移民とオーストラリア先住民の子孫である人々には、日系人であるとともに、オーストラリア先住民、またその他のアジア人移民の子孫である、ということを同時に主張するアイデンティティのあり方が見られる、ということである。これは、日本人移民の子孫であっても、「日系人」のみの視点からではなく、双方向的な視点からの分析の重要性を示すものであり、帰国後のデータ分析にも先住民コスモポリタニズムなどの新たな理論を導入させることとなった。 フィールド調査後は、平成24年度の日本における文献調査、平成25年度のオーストラリアにおける文献調査などと合わせて、調査結果の分析を行った。平成25年度から手掛けていたオーストラリア先住民と日本の関係に関する編著書を完成させ、その他に本の二章を寄稿した。また、平成27年度には、オーストラリア学会及び国際文化人類学会で研究成果発表の予定である。
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