本研究は、減反地の転作作物が「伝統野菜」といったフレーズのもとで創出され、どこか懐旧的な色彩を帯びながら商品化されていく現象を明らかにするものである。本年度は、減反・転作地に関する土地利用調査、インタビュー調査、新聞記事等の文献調査の成果を集約し、総合的な検討を加えた。 また、本年度はこれまで調査を進めてきた「長岡野菜」に加え、上越市の「上越野菜」や新潟市「食と花の銘産品」に関する動向を調査した。上越市では平成21年度から地産地消を目的として「上越野菜」と銘打った振興戦略を展開し、伝統野菜(11品目)と一定の出荷量と品質を満たしている特産野菜(5品目)を上越野菜として認定している。上越市では北陸新幹線開通、新潟市ではG7新潟農業大臣会合の開催にともなって、伝統野菜の地域ブランド化の推進と販路拡大を強化している状況を確認することができた。 食用菊「かきのもと」の県内一の生産量を誇る新潟市南区では、減反地への転作作物として栽培規模を拡大し、シェード栽培や電照での抑制栽培法を導入することで周年生産を可能にするなど、出荷量の増加が図られてきた。行政や企業、JAなどの外部アクターが後押しして地域ブランド化の推進と販路拡大を目的として様々な取り組みが行われているものの、県外出荷割合は0.3%にとどまり、むしろローカル商品としての県内需要の高まりに応えるかたちで規模を拡大していることが明らかとなった。伝統野菜がローカルに消費されていく現象を明らかにするためには、今後この問題を消費者の立場から捉え直す必要がある。
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