本研究では、減反地に転作された作物が「伝統野菜」といったフレーズのもとで導入され、どこか懐旧的な色彩を帯びながら商品化されていく現象を明らかにした。 その現象は、行政や企業、JA、などの外部アクターが中心となって展開されているものの、農家も家や集落の規模を超えた生産組合を組織し、共同で生産出荷体制に取り組んで販路拡大を図るなど、その動きに戦略的に加担し、伝統野菜が増殖し続けている。伝統野菜の創出は農家が主体的に選択した減反政策への対抗、現代社会への適応といったかたちで現れた文化の創造と改変といえる。
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