皇帝官僚制による統治機構が裁判機構を兼ね、事案の重大性に応じてその裁決権を上級機関が保持する帝制中国の裁判システムにおいては、下級機関から報告がされない限り、裁判手続は進まない。犯罪者を拘禁しておきながら裁判手続をすすめずに獄に放置することを、古来中国では「滞獄」と称し、解消するべき問題として捉えてきた。 本研究では、清朝初期の裁判史料及び法制史料の分析を通じて、清朝が、従来の王朝とは異なり、滞獄を、司法監察の際の一括審理によってではなく、下級機関からの報告の徹底により解消しようとし、そのための制度を整備したことを明らかにした。
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