研究課題/領域番号 |
24730009
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
橋本 祐子 九州産業大学, 基礎教育センター, 准教授 (80379495)
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キーワード | 刑罰 / 復讐 |
研究概要 |
本研究では、「復讐」や「赦し」の感情に関する最新の哲学的・心理学的研究の進展を踏まえた上で、それらと正義概念との関係について精査を行い、さらに復讐感情を法へ反映させることが刑事政策における安直なポピュリズムをあおる危険性も考慮しつつ、法制度を通じて復讐感情を昇華させる可能性が存在しうるか否かについて検討を行うことを目的とする。 平成25年度においては、前年度に引き続き、刑事法思想史、刑事政策理論に関する国内外の文献を精読し、「復讐感情」や「赦し」が刑事法・刑事政策の領域においてこれまでどのように検討されてきたのかについて理解を深めた。文献精読を行うなかで、「名誉の擁護」に国家刑罰権の正当化根拠を求める著作に着目し、名誉と復讐と刑罰の関係という観点から批判的考察を行ったものを書評としてまとめた。 さらに、いまだ主要な潮流とまではいえないものの「法と感情」とも呼ぶべき研究領域が存在しており、この領域の文献を収集し、法と感情の問題を考察するためのさまざまなアプローチについて理解し検討を行った。同時に、「法と文学」の領域における「復讐感情」や「赦し」に関する文献についても精読を行った。また、認知心理学の領域における「復讐感情」の位置づけについても文献を収集し理解に努めた。 以上のような本研究の中間的な研究成果について、他の研究者から意見や批判を仰ぐべく、法理学研究会や日本法哲学会学術大会分科会において研究発表を行い、多くの研究者から示唆に富む貴重な指摘をいただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
復讐感情と刑罰の関係について、前年度より引き続き検討を行い、中間的な研究成果をまとめて発表することに時間を要したため、「赦し」と刑事政策との関連について十分に考察を進めることができなかった。 また、当初の予定では、平成25年7月にブラジル(ベロ・オリゾンテ)において開催されたIVR(法哲学・社会哲学国際学会連合)世界大会のワークショップにおいて中間的な研究成果を発表し、海外の研究者との意見交換を行うことになっていたが、開催時期が大学の学期中であったため調整ができず遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の前半は、現時点で遅れている「赦し」と刑事政策の関係について考察を深めることに努める。 平成26年度は最終年度であることから、研究成果の総括を行うことを念頭におき、平成25年度に研究会や学会で中間的な研究成果を発表した際にいただいた意見や批判をフィードバックして、「復讐感情」と「赦し」の法理論についての論文をまとめ、国内外の学術雑誌に投稿し公表することをめざす。また、論文執筆を行うにあたり、英米圏における法哲学と刑事法・刑事政策の交錯領域について考察を進めている海外の研究者との意見交換を行うことも考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では、平成25年7月にブラジル(ベロ・オリゾンテ)において開催されたIVR(法哲学・社会哲学国際学会連合)世界大会に参加しワークショップで報告することをにしていたが、開催時期が大学の学期中と重なったため調整が困難となり参加を取りやめざるをえなかった。そのために予定していた旅費などを使えなかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。 まず、現時点で不十分である「赦し」と刑事政策の関係についての文献収集のために使用する。 さらに、論文執筆にあたり、英米圏における法哲学と刑事法・刑事政策の交錯領域について考察を行っているイギリスの研究者を訪問し意見交換を行うために使用する。
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