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2015 年度 実績報告書

近代日本における「雇用契約」および雇用法理論の法史学研究

研究課題

研究課題/領域番号 24730010
研究機関尚絅大学

研究代表者

宇野 文重  尚絅大学, 比較文化学部, 准教授 (60346749)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード雇用法史 / 「家」成員と奉公人 / 明治民法 / 大正改正要綱 / 穂積重遠 / 1920年代臨時法制審議会 / 「家」制度
研究実績の概要

本年度の主たる成果は、1900年代前半の民法学における「家」概念の分析から、家族員としての奉公人について検討した点である。その成果は、「中川善之助――身分法学の「父」と戦時」(松本尚子ほか編『戦時体制と法学者』所収)、「明治民法「家」制度の構造と大正改正要綱の「世帯」概念」(林研三ほか編『家と共同性(仮)』所収、2016年8月刊行予定)にて公表した。
1910年代以降の工業化や資本主義経済の進展により、地主小作関係や労使関係は動揺をきたし、小作調停法(1924)、労働争議調停法(1926)が制定される。その背景には、農村共同体や労使(奉公)関係における紛争解決機能の低下や家父長的温情主義の希薄化がある。家族についても、「家族制度」強化のために「我邦固有ノ淳風美俗」に沿った民法改正が試みられ、1925・27年に「民法改正ノ要綱」が公表された。この要綱の特徴は、復古的な「家」を強化する側面と新しい家族形態=「単婚小家族」を想定した「進歩的」側面の二面性にあるとされる。
改正を主導した穂積重遠は、夫婦と未成年子を核とする家族像を提示し、妻の権利保護に尽くした「進歩的」立場として高く評価される。しかし、穂積は必ずしも現代の核家族的な家族像を示したわけではなく、あくまで共同生活の実態がある単位=「世帯」を、その規模を問わず法律上の「家」とすることを主張し、さらにスイス民法331条2項が「僕婢徒弟使用人」=「家長の親族でない共同生活者」を「家」の成員とした規定をわが国でも適用すべきと論じている。共同生活単位を「家」とする穂積の「家」理解は、明治前期以降その「喪失」が嘆かれていた主従間の情誼的家族的要素を包含するという意味で、伝統的な「家」観念に通底するとともに、社会的実体の法規範化であり民法の「家」の実質化であった。これは、国民再統合という当時の課題に応えるものであったとの結論を得た。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 「非嫡出子相続分最高裁違憲決定――非嫡出子をめぐる”事柄の変遷”」2015

    • 著者名/発表者名
      白水隆・宇野文重
    • 雑誌名

      『法学セミナー』

      巻: 731 ページ: 38-47

  • [学会発表] 「明治民法『家』制度の構造とその展開――2つの『家』モデルと生活共同体」2015

    • 著者名/発表者名
      宇野文重
    • 学会等名
      比較家族史学会(第57回研究大会)
    • 発表場所
      札幌大学
    • 年月日
      2015-06-20 – 2015-06-21
  • [図書] 『家と共同性――家社会の成立・展開・比較(仮)』2016

    • 著者名/発表者名
      加藤彰彦・戸石七生・林研三編
    • 総ページ数
      未定
    • 出版者
      日本経済評論社
  • [図書] 『戦時体制と法学者 1931~1952』2016

    • 著者名/発表者名
      小野博司・出口雄一・松本尚子編
    • 総ページ数
      413
    • 出版者
      国際書院
  • [図書] 『現代家族ペディア』(「学説史 日本法制史」を担当)2015

    • 著者名/発表者名
      比較家族史学会編
    • 総ページ数
      359
    • 出版者
      弘文堂

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公開日: 2017-01-06  

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