本研究は、従来の日本の憲法訴訟論においておよそ積極的に評価されてこなかった「動機審査(motive scrutiny)」について、その意義を再検討することを大きな目標とする。ここで「動機審査」とは、とりわけ立法府の政策形成プロセスに焦点を合わせ、法律が公正で偏見のない見地から制定されたかどうかを吟味するという、違憲審査の一手法のことを言う。 この課題研究の進展に向けて、平成25年度は、前年度に計画していた課題の積み残しであった基礎文献の読み込みを継続して行った。具体的には、アメリカ憲法学を素材として、19世紀初頭から今日まで蓄積されてきた「動機審査」に関する判例・学説を精読し、その歴史理解を豊かにするべく試みた。なお、当初は20世紀の判例・学説を重点的に読み進める予定であったが、19世紀の議論に関してあらためて検討する必要に気づいたため、計画を変更して研究範囲を拡大させて読み込みを進めた。 研究の遂行にあたっては、とくにアメリカ憲法史学の業績には裨益するところが大きかった。この分野の業績に多くを学びながら、19世紀から20世紀にかけての「動機審査」の歴史に関して、そしてひいてはアメリカ憲法裁判全体の歴史に関して、より豊かな理解が可能になったと考えている。 なお平成25年9月に、調査・研究のためにアメリカ合衆国に出張を行い、コロンビア大学やウィリアム・アンド・メアリー大学などを訪問した。その後平成25年10月以降は、研究の総仕上げとして、成果となる論文の執筆を進めた。
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