本研究は、近現代中国憲法における「市民」について、概念面と実態面から解析する試みであった。すなわち、(1)近現代中国の憲法における権利・主権の享有主体たる臣民、国民、人民、公民といった諸概念の変遷・特質を比較憲法学的に考察する(「市民」の概念的検討)とともに、(2)今日の中国・台湾における「市民」の創出・生成状況を情報公開請求や請願(信訪)などの具体的事例を観察しつつ実証的に明らかにする(「市民」の実態的検討)ことを通じて、東アジア諸国において、立憲主義・民主主義を実現するための諸条件、あるいはそれらの実現を阻害している諸要因を探究した。
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