アメリカ合衆国の社会変革において、憲法訴訟が重要な役割を果たしてきたことは論を俟たない。なかでも強固な社会的基盤をもつ主導的なマイノリティ団体(NAACP[全米有色人種地位向上協会]など)が訴訟の担い手となった事例は数多くみられる。しかし、人種マイノリティに関しては近年、アジア系やヒスパニック系など多様なマイノリティ集団が規模を拡大してきており、訴訟における対立構造にも変化が見られる。そのため1960年代のアフリカ系アメリカ人を中心とした反差別運動時にはみられなかった現象として、マイノリティ集団間の対立が訴訟を通じて浮上することがある。その背後には経済格差や社会的基盤の広狭の格差が存在する。
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