アメリカ再建期の憲法理論について、主に検討を行った。アメリカ再建期とは、合衆国憲法修正14条という、アメリカ憲法中で最も重要な条文の1つが追加された時期にあたる。本条項の追加が、アメリカ憲法秩序に及ぼす影響に関心をもったのが、この時期に着目した動機である。 実際の研究にあたっては、まず、南北戦争・再建期がアメリカの国家構造ならびに憲法秩序に与えた影響を大局的に観察し、何らかの憲法秩序の変動はあったのか否かを解明することを「研究の目的」として掲げた。これへのアプローチの方法として、連邦最高裁の判決、当時の連邦議会議事録、講演などをたどることとした。 こうした「目的」に対して、憲法秩序の変動ありやなしやについての明確な結論は得られていない。本研究期間内に収集した資料の分析が遅滞しているためである。この一次資料を足がかかりに、これを更に読み解き、分析する作業を、引き続き行っていくつもりである。 ただ、そうした確固とした結論は得られないまでも、本研究課題を進めるうち、わが国におけるアメリカ憲法学研究において、先行研究の少ないこの時期について、注目し解析すべきポイントは明らかになったと考える。それは、合衆国再建期の主権論の考察を通じて、共同体を維持するための「排斥」の理論と、今日においても論争のある公私区分論の関係性を探ることである。 「若手研究B」の期間内に収集させていただいた資料とこの新たな課題を基礎に、さらにアメリカ憲法学に関する考察を深めていきたい。
|