研究課題/領域番号 |
24730023
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
木村 草太 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (50361457)
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キーワード | 憲法 / 平等権 / 平等原則 |
研究概要 |
本年度は、5月に学会報告を行い、12月に指導教員の古期記念論文集に論文を寄稿した。いずれも、憲法訴訟論に関するもので、日米の判例を研究しながら、憲法訴訟の諸概念を整理したものである。 平等権に関する憲法訴訟を分析する上では、立法裁量・立法事実・立法目的の諸概念の理解を深めることが極めて重要であり、5月の憲法理論研究会(新潟大学)での報告にて、この点を深めた。当日の議論を踏まえた上で、憲法理論研究会叢書に原稿を寄せた。 また、12月の刊行に向けて、憲法判断の方法に関する研究を行った。平等権は、自由権・請求権双方の性質を有するので、まず、その前提として自由権・請求権に関する訴訟の方法論を固めておく必要がある。この点について、研究を行い、5月の学会報告をも踏まえた憲法判断の方法論全体に問題提起を行う論文を執筆した。 以上が本年度の中心的研究だが、その他、地方自治と地方公共団体における平等についても研究を進め、租税の平等に関する神奈川県特別企業税事件の研究を行い、判例評釈を公表した。また、本年までの研究をまとめて、「法の下の平等」として、米独の判例研究を踏まえた原稿を論文集に寄稿した。さらに、法律と条例の関係についても研究を行い、法律が地方公共団体間の平等を図っていく機能を果たすことを確認した。 さらに、国民の平等のために重要な理念である立憲主義に関する研究を、一般向けの媒体を含め、様々な媒体にて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、インプットの面では、引き続き、判例や文献の収集を進めた。判例・文献の収集は適切に行うことができたし、読解・整理を十分に進めることができた。従来より蓄積のあったアメリカ判例に加え、本年はドイツ法の文献を処理し、さらに、社会学や政治学などの隣接諸分野についても視野を広げた。 また、アウトプットの面では、昨年からの研究成果をまとめて原稿にまとめることができたし、それ以外の分野に視野を広げた研究も行うことができた。原稿の件数も多く、また、必ずしも読者が研究者に限られない媒体に公表することで、一般社会にて平等権や平等原則がどのように受け止められているかを理解することができた。 以上の次第で、本年は、おおむね順調に研究が進展したと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年までの研究成果を総合し、幾つかの論文や体系書にまとめる方針である。基本的には内外の文献にあたり、平等権・平等原則に関する検討を深める。 具体的には、本研究の主目的の判例研究を継続し、また、特にそこに示された原理論への考察を整理した上で、論文にまとめる。また、立憲主義という基本原理からの考察が有益な場面があり、そうした点にも視野を広げ研究を進める予定である。さらに統治機構分野との結びつきについても整理する。 具体的には、平等権に関する憲法訴訟論、立憲主義の中での平等原則、法の支配における法の下の平等概念の意義について、研究を進める予定である。 また、今後も、論文集の発表、論文の発表、著書の刊行、学会報告などを通じ、研究成果を広いアクセスに置けるようにするとともに、官公庁・法律実務家とも意見交換を行い、幅広く研究成果の社会還元を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度中は、これまでの研究を整理する作業が多く、他方、洋書を中心に、来年度、資料収集が必要なため、一定金額を残しておく必要があると判断した。 研究費の使途としては、文献読解・収集のための書籍費用、専門研究者から知識の提供を受けるための謝金等、学会出席・文献収集のための旅費などに利用する。本年度は、研究の進展に伴い、一定の洋書代が必要になることが想定される。 また、判例については、オンライン情報にアクセスし、プリントアウトして利用する場合もあるため、印刷機に関する費用も支出する可能性がある。また、研究のために著名研究者と意見を交換する研究会の開催が有益であり、年に2回程度を予定している。
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