研究課題/領域番号 |
24730023
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
木村 草太 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (50361457)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 平等権 / 平等原則 / 婚外子相続分 / 憲法 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、11月の国際人権学会総会報告(11月23日、広島大学)に向け、非嫡出子の法定相続分に関する研究を進めた。その間、この論点に関わる平成7年決定までの議論、平成7年決定が出た後の決定に関する評価、平成7年決定以降の最高裁決定の分析、平成20年の国籍法違憲判決の分析、国籍法違憲判決の評釈を分析し、平成25年の最高裁決定の論理を検討した。学会報告に向けて、山形、東京の司法書士会での研究会にも出席し、相続に関する実務家とも意見を交換した。 理論面では、ケルゼンの理論において、平等の問題がどのように扱われているかを検討し、同時並行で、差別の禁止規範に関する諸法の内容を検討した。その他、平成25年決定に関する判例評釈は、概ねすべてに目を通し、一般文献や弁護士会、司法書士会、金融関連の専門誌での論稿も考察にいれた。 研究結果としては、平成25年決定に至る婚外子相続分規定の違憲論には、婚外子相続分が立法目的に適合しない技術的不十分さがあると言う議論と、そもそも差別を表象する規定であり、差別助長の禁止の観点から違憲を説く議論の二種類があることが判明した。 平成25年決定の議論は、極めて不明確であり、判例評釈も、そもそも違憲審査基準の段階で読み方が分かれている。今回の研究の成果としては、平成25年決定は、差別禁止の理念に依拠したもので、平成7年の技術合理性に関する判断とはそもそも適用規範の点で異なっていることが判明したことが挙げられる。さらに、これを前提にすると、同決定が、なぜ確定した法律関係に影響しないのかも十分に説明がつく。 平成25年決定の論理を、ほぼ完全に解明することができた一年であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究機関中に、最高裁が極めて重要な決定を出し、理論研究を実践的な研究に反映させる良い機会を得た。本年度は、この決定を中心に検討した。多くの判例評釈が、違憲審査基準をめぐる表層的な内容に止まる中、論理や実務面への影響も視野に、全容を解明する研究実績を上げた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年11月23日の国際人権学会総会報告(広島大学)を、論文化し、学会誌に掲載することが目的となる。ここでは、学際的な研究総会で得た、他分野や実務家からの示唆をどう原稿に反映させるかが課題となるが、実務家向け雑誌の論文を多く読み、民法学の専攻者から助言を得るなど堅実に進める。 また、平等原則に関する体系を整え、体系書にまとめる作業を進める。体系への整理では、幅広い資料の収集、適切な整理枠組みの確立が課題となるが、ここまで理論研究はかなりの水準に達しているので、その理論に従い適切に処理できるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会出張用の旅費について、平成26年11月23日の国際人権学会総会報告(広島大学)が招待講演になったため、個人研究費の支出で十分となった。このため、旅費を支出する必要がなくなり、他方、次年度、洋書の購入予定があり、次年度使用額を残した。
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次年度使用額の使用計画 |
平等権と平等原則に関する古典洋書の購入のために、次年度使用額を利用する。
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