本年度は、研究計画の最終年度として、古典的業績の分析とともに、判例の検討をこなった。6月には、アメリカ連邦最高裁で同性婚判決が出ており、日本でも12月に夫婦別姓訴訟・再婚禁止期間違憲訴訟の判決が出た。 これらの判決はそれぞれに興味深いものであった。アメリカの判決は、画期的である一方、これまでの第14修正に関わる判決の延長線上にあり、従来の判例理論の分析を踏まえて、論文にまとめた。論文原稿は平成27年度中にまとめ、平成28年度の早い時期に公刊される予定である。 12月の日本の最高裁判決については、日弁連の機関紙において、訴訟上の主張について分析した。夫婦別姓問題については、女性差別からアプローチする議論と、同姓希望カップルと別姓希望カップルの不平等としてアプローチする議論の二通りがある。前者が主流で、弁護団の主張もそれに則るが、これはどちらかというと悪手である。条文が男女の区別をしていない以上、そもそも平等権制約がないと結論されるのが目に見えているからで、訴訟の流れの中でも原告劣勢のまま議論が進み、最高裁でも主張が棄却された。他方、後者のアプローチから議論を組み立てた場合、被告国は、かなり苦しい立場に置かれる。この点を深く分析した論文を執筆し、こちらも平成28年度に公刊される予定である。 また、沖縄県の問題についても考察を深めた。普天間飛行場の移設について、辺野古という場所が選択されたことは、沖縄県民に対する差別と受け取ることができ、また不平等でもある。この点について、憲法92条、41条、95条を組み合わせ、差別と不平等を解消するための憲法論議をくみ上げた。この点は、沖縄タイムス紙、法学セミナー誌などに論文を公表し、一定の反響を生んだ。
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