本研究は、生存権に関する立法裁量について、制度後退禁止原則によって統制されるべき歯止めを明らかにすることを目的とし、以下の結論を導出した。即ち、社会保障(福祉)法は、附則で将来的な見直しを規定する場合があることにかんがみ、少なくとも3度の改正の機会(最大で約15年の時の経過、衆参両議院の複数回の国政選挙)を乗り越えた規定は、単なる法的地位を脱し、制度後退禁止原則の射程が及ぶ地位を獲得するとの試論を示した。また、生活保護制度は、すでに最下限の手当てを行っていることから、その制度をさらに立法によって後退ないし廃止することは、憲法25条に照らして、許されないとの結論を示した。
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