研究課題/領域番号 |
24730027
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
大橋 真由美 成城大学, 法学部, 教授 (00365834)
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キーワード | 行政苦情処理 / 行政争訟 / あっせん / 公害等調整委員会 / 原因裁定 / 年金個人情報 |
研究概要 |
当初の研究計画においては,研究期間2年目となる本年度は,本研究テーマの研究計画において示した第2ステージの作業(行政関連紛争の解決における民間の紛争解決能力の活用に関して検討を実施)と第3ステージの作業(個別の行政領域ごとに,最適な救済の受皿の在り方を検討)とを並行して実施する予定であった。 この点,まず第2ステージの作業に関しては,公害等調整委員会による原因裁定事件(神栖ヒ素汚染事件)を取り上げて分析し,その成果を自治研究誌において公表したほか,公害等調整委員会の機関紙においても公表した。この作業を通じ,同事件における民間の専門委員の活用について知ることができ,行政紛争の処理における民間の能力活用の一つのあり方を明らかにすることができた。 また,第3ステージの作業については,昨年度は,社会保障審議会年金部会に設けられた「年金個人情報の適正な管理のあり方に関する専門委員会」に委員として参加することにより,年金個人情報訂正制度の新設作業に携わった。この経験を通じ,総務省の有する「あっせん」権限に基づく行政苦情処理の限界や,厚労省が所管する年金個人情報の内容に関する争いを裁判外で解決するための最適な仕組みの在り方について考える機会が得られた。こちらについては,近々論文としてまとめ,公表する予定である。 上記以外では,研究初年度に引き続き,総務省「行政相談高度化アドバイザー」の職に携わること等を通じ,行政苦情処理制度全般に関する知見の深化に努めたほか,地方自治体レベルの苦情処理活動につきまとめた論稿を,共著『シリーズ自治体政策法務講座 第3巻 争訟管理』において公表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目は,当初の計画にあった通り,第2ステージおよび第3ステージの作業を中心に分析・検討作業を展開し,上記「研究実績の概要」に示した通り,成果をまとめた論稿についても公表の機会を得ることができた。その意味では,研究計画をある程度順調に進めることができていると評価することができる。 ただ,現段階においては,まだ研究計画書において言及していた外国の事例に関する調査に着手することができていない。そのため,現在までの達成度としては「おおむね順調に進展している」とするにとどめた。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目となる平成26年度は,これまで2年間の研究成果を踏まえて,研究計画を予定通りに進めるべく注力することとしたい。具体的には,①引き続き第2ステージおよび第3ステージに関する分析・検討作業を,外国の事例に関する調査等も踏まえつつ進め,さらに,②現在行政不服審査法の改正の動きが山場を迎えているため,より行政争訟制度全体の理解を深めるために,行政不服審査法改正をめぐる諸動向に関しても資料収集やヒアリング等を通じて知見を深めることとしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究期間のはじめの2年間の間で少なくとも1度は海外事例の調査のための海外出張を実施する予定であったが,家庭の事情で出張を実現することができなかったということが主たる理由である。 研究3年目となる平成26年度は海外出張をぜひ実現することとしたい。また,国内各地の具体事例に関するインタビューも実施することとし,研究費を適切に支出していくこととしたい。
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