最終年度となった昨年度は,それまで着手できていなかった作業を実施することと並行して,本研究テーマの包括的な取りまとめを行うべく努めた。 最終年度の成果としてまず挙げるべきは,一昨年度末に河中自治振興財団主催の「行政法制研究会」にて行った,まさに本研究テーマに関わる研究活動を総括する内容を含む報告(報告タイトル「『行政に関わる権利利益の訴訟以外の方法による救済』に関する再検討 : 公法学会報告のその後」)の内容を改めて整理して原稿化し,行政法分野を代表する学術雑誌の一つである「行政法研究」の17号において公表したことであろう。 次に,本研究における問題関心の背景として,行政不服審査制度の抜本的見直しの現実化というものがあった。この点に関し,改正行政不服審査法が昨年4月に施行され,筆者も,東京都の行政不服審査会の委員としての仕事をスタートさせ,改正行政不服審査法に基づく実務の展開を身をもって体験することができた。また,このような経験も反映させつつ,『条解行政不服審査法』(高橋滋=小早川光郎編,弘文堂,2017年)への寄稿や加除式書籍『行政訴訟の実務』(行政事件訴訟実務研究会編,第一法規)における行政不服審査に関する項目の執筆なども行った。 さらに,一昨年度までの段階において実施できていなかった,アメリカへの資料収集のための出張も実施することができ,国内においては入手が困難な,貴重な各種資料を入手することもできた。 研究期間全体を通じては,本研究テーマに直結する内容の単著として平成27年(2015年)に『行政による紛争処理の諸形態』(日本評論社)を公刊することができたほか,研究テーマに関わる具体的・包括的提言を内容として含む報告を日本公法学会および行政法制研究会において行い,これらの報告原稿を適宜学術雑誌に報告することができ,当初の研究目標を概ね達成できたと考えている。
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