研究課題/領域番号 |
24730029
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
清水 潤 中央大学, 法務研究科, 助教 (40611455)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 憲法思想史 / 共和主義 / 自由主義 / 徳 / 思想史 |
研究概要 |
研究計画では、アメリカ憲法思想史において、自由主義思想がどのように誕生し、歴史を通じて展開していったのかを、共和主義思想や徳論との関係を特に重視しながら研究することを予定していた。 このような問題意識の下で行った学会報告が、2012年11月の関西学院大学で行われた、日本法哲学会での報告「ロックナー・コートにおける徳の人間像:アメリカ法思想史における古典的自由主義の一断面」である。本報告では、主として19世紀後半から20世紀前半のアメリカにおける自由主義憲法思想を、徳論の見地から分析した。その際、アメリカ建国期や、18世紀ブリテンにおける古典的共和主義の影響をも十分念頭に置いて報告を行った。 本報告においては、広く聴衆を集めることができ、質疑応答も活発であった。本報告の意義は、未だ我が国においてほとんど先行研究のない19世紀後期アメリカの憲法思想史の本格的な検討を行ったことに留まらない。古典ギリシア・ローマ期に端を発し、ルネッサンス・イタリアを経て18世紀のイングランド、アメリカに継受された古典的共和主義の波動が、遠く19世紀アメリカにまで及んでいることを示唆することができた。かかる報告は、アメリカ憲法史、政治思想史の像それ自体に一定の修正を迫るものである。 次に、アメリカ憲法思想史における自由主義の発展は、単に徳論や共和主義の影響という見地からのみでは十全に解明できないことが、研究を進める中で明らかとなり、研究は別の方向にも向かうこととなった。古来の慣習こそ正統な法であると主張する古典的なコモン・ローの法思想を、クックをはじめとする17世紀イングランドの法律家は提唱していた。かかる法思想がアメリカの憲法思想に大きな影響を与えており、このような思想動向の研究なくして、アメリカ憲法思想史の十全な理解は不可能であると判断し、その研究を一定程度進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画においては、アメリカ建国期から19世紀にかけての政治思想史、憲法思想史を、特に古典的共和主義や徳論の影響という観点から検討する予定であった。かかる研究は、2012年11月の日本法哲学会での報告において、一応の総括を行うことができた。 研究を進める中で、アメリカ憲法思想史は、共和主義や徳論のみならず、古典的なコモン・ローの法思想の研究なくして解明されえないと考えるに至った。現在は特にその方向性で研究を進めている。 研究の方向性に若干の修正が生じた形となったが、アメリカ憲法史を建国期から19世紀にかけて研究するという大まかな方向性は全く変わっておらず、むしろ研究内容が豊穣になったと考えている。この方向での研究の成果としては、2012年5月、10月に行った学会・研究会での報告があり、2012年9月には論文が公刊された。また、2013年9月にはさらなる論文が公刊される予定であり、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこれまでと同様、主として英米の1次文献、2次文献の詳細な読解を中心とした研究を行う予定である。また、2013年度夏から留学を予定しており、その際にアメリカの大学の研究者との交流や、文献のさらなる調査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越金が発生した理由としては、文献の購入費が予定よりも安く済んだということがあげられる。学術書は一冊につき、安いときは5千円を割るが、高いときは数万円もするので、予測がしにくい部分がどうしてもあるので、このようなことはやむを得ない。次年度も、文献購入、旅費、パソコンなどの設備費に研究費を使う予定である。
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