研究課題/領域番号 |
24730029
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
清水 潤 中央大学, 法務研究科, 助教 (40611455)
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キーワード | アメリカ憲法 / 思想史 / 憲法 |
研究概要 |
従来アメリカの憲法史および政治思想史は、ロック的自然権論、社会契約論の文脈で議論されることが多かったが、今日では古典的共和主義が特に建国期において大きな影響力を保持していたことも常識となっている。党派的利益ではなく公共の利益を追求することのできる、自主独立した有徳な市民という共和主義的人間像は、建国期アメリカにおいて確かに支配的なものであったと考えられる。このような古典的な世界像はしかし永続はしなかった。19世紀を通してアメリカでは商業と市場経済が進展し、20世紀初頭には財産権と契約の自由の憲法的保護を特徴とするロックナー期に突入することとなる。本研究の目的は、当初共和主義的な世界像から出発したアメリカが、どのようにして自由主義社会に適合的な憲法思想を編み出し、発展させたのかを明らかにすることにある。その際、労働者が有徳でありうるとの理論、労働者も勤勉や倹約といった徳を有しているとの理論が提唱され、共和主義的な徳の理論を徐々に組み替える形でアメリカの自由主義思想は発展していったとの仮説の検証を暫定的な研究目的とした。平成25年度はアメリカでの在外研究中、建国期政治思想の研究を特に共和主義や社会契約論の影響という観点から進展させることができたが、研究を継続する過程で、申請者の研究関心は建国期から20世紀初頭までのアメリカにおける自由主義思想の解明という大きな枠組みを維持しつつも変遷を伴った。研究期間中、アメリカ憲法思想史におけるコモン・ロー思想、古来の国制論の影響の大きさを発見し、このような思想史的文脈の解明なくしてアメリカ憲法思想史に肉薄することが難しいと考えるに至り、その研究成果がまとまった段階で平成24年度から25年度にかけて連載論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を遂行する過程で研究関心に変遷があったが、大きな枠組みでは研究は順調に進展していると考えられる。平成24年度から25年度にかけて連載論文を紀要に公表したほか、学会・研究会での報告を3度にかけて行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後も一次文献及び二次文献の収集と分析を中心として、アメリカ憲法思想史の研究を継続する予定である。研究成果は逐次論文として公表し、研究会等で発表を行う。その際海外の研究者との連絡を取ったり、英語で論文を公表するなど国際的な発信を心がけたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
アメリカでの在外研究を挟んだため、科研費の執行ができなくなったため。 図書の購入、研究会出席、文献収集出張のために使用する予定である。
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