研究計画では、アメリカ憲法思想史において、自由主義思想がどのように誕生し、歴史を通じて展開していったのかを、共和主義思想や徳論との関係を特に重視しながら研究することを予定していた。 かかる研究は、すでに複数の論文や学会報告を経て一定の成果を残すことができたと考えているが、アメリカ憲法思想史における自由主義の発展は、単に徳論や共和主義の影響という見地からのみでは十全に解明できないことが、研究を進める中で明らかとなり、研究は別の方向にも向かうこととなった。古来の慣習こそ正統な法であると主張する古典的なコモン・ローの法思想を、クックをはじめとする17世紀イングランドの法律家は提唱していた。かかる法思想がアメリカの憲法思想に大きな影響を与えており、このような思想動向の研究なくして、アメリカ憲法思想史の十全な理解は不可能であると判断し、その研究を一定程度進めることができた。 2013年度12月にかかる研究をまとめた連載論文を公表したほか、2015年4月に同志社大学において、研究の成果を研究会で報告した。2015年11月にも沖縄国際大学にて、研究成果の報告を予定している。 それのみならず、かかる研究の比較法的含意を世界の読者に公表するべく、英語での報告を2014年から2015年にかけて複数回行った他、査読結果は未だ出ていないものの、アメリカのジャーナルに論文を投稿することができた。 このように、研究の方向性自体は当初の予定から発展し、変化した面はあるものの、研究助成の成果として、論文の公表、研究会での報告などを、日本語、英語の双方で活発に行うことができたと考えている。
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