研究概要 |
2012年度は、①基礎的な文献サーヴェイ、②2008年12月31日までの財政規律に関する研究、③2009年1月1日から2012年12月31日までの財政規律に関する研究を行った。 (1)に関しては、本研究遂行の基礎となる部分であり、綿密な文献サーヴェイを行った。具体的には、Ohlinger, Theo: Verfassungsrecht, 8. Auflage, 2009及び Gerhard Steger und Alfred Pichler, Das neue Haushaltsrecht des Bundes, Wien: Verlag Österreich, 2008 を中心とした文献サーヴェイを行った。 (2)に関しては、まず、当該期間における憲法上の財政規律の規定に関して、その制定時の背景及び制定趣旨も含めて詳細な憲法解釈を行った。その上で、当該財政規律の規定が現実の財政運営に対してどのような影響を与えていたかについて考察した。 (3)に関しては、まず、2012年の下記にオーストリアにおける現地調査を行うことで入手した最新の資料(Lodl et at al: BHG 2013, 3. Auflage, 2012 など)を徹底的に読み込んだ。 これらの研究成果から、2008年の連邦憲法改正により、新たに憲法上根拠付けられた誕生した「連邦財政枠組法律(Bundesfinanzrahmengesetz)」が財政規律における重要な要素として位置づけられていることが判明した。特にヒアリングの結果からは、オーストリアの関係者はこの連邦財政枠組法律を非常に重視していることが読み取れた。しかし、その反面、中期的な財政規律という点において、連邦憲法による規律が不十分であるため、実際の財政問題に対する効果は必ずしも十分ではないということも判明した。
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