研究課題/領域番号 |
24730031
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
北見 宏介 名城大学, 法学部, 准教授 (10455595)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 公法学 |
研究概要 |
本研究は、アメリカ合衆国におけるアミカスキュリエ(Amicus Curiae)の制度、すなわち裁判所に対して見解を表明するしくみに着目し、特に、政府(執行府)がアミカスキュリエの制度を用いる政府アミカス(Government Amicus)の局面の分析検討を行うものである。本研究期間の初年度である平成24年度は、研究の最終目的である政府アミカスの裁判過程・行政過程において果たしている機能の解明に向けた準備作業、及びアミカスキュリエ制度自体と政府にとってのアミカスキュリエの捉え方に係る歴史的な背景を探る作業を行った。 ここでは、1)アミカスキュリエの制度(運用)発祥国であるイギリスでの議論の検証を行いつつ、2)アメリカ合衆国における初めての政府アミカスの運用がなされた、Georgia v. Florida, 17 U.S.(How) 478 (1854) の、その後のアミカスキュリエをめぐる議論での位置づけのなされ方に着目した検討、3)1950年代以降の政府アミカスとアミカスキュリエの全体的な増加傾向の状況に対する評価、4)特に2000年以降から現在まで続く、政府からの書面提出における政府アミカスの割合の激増と、その役割の相対的増加を受けた議論状況、の検証を行った。 この検証結果として、合衆国政府内で政府アミカスに関する権限を有する、司法省内の訟務長官(Solicitor General)の役割として、「10人目の最高裁裁判官(The Tenth Justice)」としての位置づけが、とりわけ強く意識される活動局面であることが確認され、またこれをもとに、平成25年度の作業で検討すべき政府アミカス書面と、分析に係る要素・アクターを抽出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における平成24年度の作業進捗は、おおむね計画通りのものであった。 本研究は、特に最高裁判所における訟務長官による、本案に関する政府アミカスの提出の局面に検証の焦点を置くことを計画したものであり、本案前すなわちサーシオレイライの局面については、よほどの研究の捗りがない限りは着手しないことを想定していたが、平成24年度の研究作業においては、この本案前の局面の分析に向けた準備作業に取りかかるまでには至らなかった。 しかし他方で、いくつかの点に関しては、本研究の計画策定時には念頭に置いていなかった事項についても、一定の作業を行うことができた。すなわち、まず第一に、本研究の平成24年度の作業計画である、アミカスキュリエに関する歴史的な背景分析においては、当初はアメリカ合衆国における1850年代の運用を検討対象期のスタートと想定していたところであったが、検討範囲外の事項としていたイギリスでの歴史的な展開と、それをめぐる議論にも一定程度の検討の目を向けることができた。また第二に、本格的な検討は次年度以降の作業となるが、州レベルにおけるアミカスキュリエの運用に関する事例・文献の調査にも着手することができ、特に、いくつかの州における(州)政府アミカスを担当する省をめぐる近時の状況に関する知見も得ることができた。 いずれも本研究において、計画時点では研究の射程外としていた事項であったが、これらの作業で得た知見も踏まえて、いっそうの厚みを持った、また派生的な寄与をも果たしうる研究成果の公表へ向けた作業を行う所存である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の計画においては、平成25年から本研究の主たる対象である、政府から提出されたアミカス書面(あるいは訟務長官による最高裁判所での口頭弁論記録)の検討作業に着手する。従来の実定法学における研究では、頻繁になされていた作業ではないことから、想定していなかった作業上の困難が生じる可能性も完全には否定できないところであるが、すでに前年度のうちに行っている、他学問分野での裁判過程を含む決定への外的刺激因子に着目した研究を行ってきた研究者との交流、またそこで得られた助言等を参考にしつつ、平成25年度の作業を行う予定である。 また、上記【現在までの達成度】欄に記したとおり、本研究の計画策定時には意図していなかった作業によって得られた材料も検討素材に含んだ上で、平成25年度の作業に取り組むこととなる。 さらに、平成24年度の研究における作業においては、研究開始時にはさほど強くは意識していなかった、これまでの法思想史・法哲学・法社会学における研究の蓄積との連接を意識するにも至った。すなわち、アメリカ合衆国における裁判官の行動を規定する諸要素の分析に関しては、アメリカ合衆国に加えて、すでにわが国においても基礎法学において、例えばいわゆるリーガルリアリズムの理論紹介や分析に係る諸業績の中にも共通するものが含まれており、あるいは政治学における裁判所分析に関する業績の中にも、本研究にとって有益なものが含まれていることを意識した。 もとより、行政法学を専攻する自身にとって、こうした基礎法学・政治学に関する深い考察を行うことは不可能であろうが、こうした研究領域での知の蓄積との接続も意識した研究の推進を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度における研究作業では、研究作業及び研究成果の関連領域との接続を意識するに至った。このため、平成25年度において関連領域の文献の購入を行うために、本研究課題への基金による助成という利点を生かし、前年度からの繰り越しを行った。当初の研究計画通りに、出張・備品購入を行うことに加えて、前年度からの繰り越し分を、基礎法学・政治学等の関連分野の文献等の購入に充てる予定である。
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