本研究は、合衆国政府がアミカスキュリエにより裁判所に見解を表明する局面を対象とする。最終年度である平成26年度においては、これまでの検討を受けた最終的なとりまとめに向けた作業を行った。ここにおいては、当該事件において最高裁判所が判断を行った場合の、合衆国政府の立法・政策プログラムに対して与える影響に関する情報提供という機能を果たしていることが明らかになった。特に立法・政策プログラムの変更による当該事件に係る問題解消の(不)可能性についての助言という側面があることを解明した。こうした機能に対する最高裁裁判官(とロークラーク)の期待と、当事者による反応についても補完的な検証を行っている。近時における合衆国政府によるアミカスキュリエの利用の増加の背景には、市民的権利に関する立法の拡大、連邦・州政府をまたぐ複雑な政策が増加していること等が存在していることも明らかになった。 他方、前年度の終了を控えた時期に、わが国でも知財高裁が一般からの意見公募を行ったため、知財関連訴訟について意識が向けられることになったが、当該分野を対象として具体的な検証作業等を行うまでには至らなかった。 司法省や訟務長官が、当該事件で争われる、あるいは関連をする具体的な政策プログラムを形成執行しているわけではないため、当該政策に直接的に関わる政府機関の訴訟に対する見解が、どのような組織構造の下でいかように形成されるのかという点、および、訟務長官がアミカスキュリエとして表明する見解が、通常は政府内の多元的な利害を考慮したものである一方で、一本化されないことがあり得ることを念頭に置いた議論もなされていることをめぐる、裁判の構造に関する理念の検証が、本研究を経て残された課題である。
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