最終年度である平成26年度は、国際テロリズムに関する決議1373や大量破壊兵器の非国家主体への不拡散にかかわる決議1540などに代表される安保理による「国際立法」とされる実行を検討対象とした。こうした実行においても、法的コントロールが必要でありまた実態としても法的コントロールの萌芽がみられることが明かとなった。 こうした実行の検討にあたっては、まず「事後の実行」概念を国際組織法の観点から再検討し、加盟国の合意に還元されない「機関の実行」、さらにはより広い射程をもつ「組織全体の実行」という視座が重要であることを確認した。そうした視座により、安保理による国際立法行為だけでなくその実施に関わる実行を総合的に評価するという分析枠組みが可能になる。 決議1373および決議1540の実施に関わる実行を全体的に概観した場合、加盟国の広い支持が獲得されていることと同時に、組織の実行として確立していく過程にあると評価できる。他方で、法的コントロールとしては、国際立法の実施過程における国際人権規範を中心とした国際法との合致を追求する動きがみてとれた。さらに、そうした動きにおいて重要な影響力を及ぼす様々なアクターも確認できた(CTCや1540委員会とその下に設置されているCTEDや専門家グループ、さらには国連人権高等弁務官、国連人権理事会が任命した特別報告者など)。但し、こうした国際人権規範を中心とする法的コントロールを理論的に概念化する作業については、国際・国内判例や学説がまだ萌芽的なために今後の課題となる。 法的コントロールの実践と理論における不十分さを埋めるために、アカウンタビリティや民主的正当性という観点からのアプローチが必要であることも明かとなった。参加の確保、透明性、対話などを重視する考え方として、これらを国際立憲主義の中に位置づける作業が今後の課題となるであろう。
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