研究課題/領域番号 |
24730039
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
棟居 徳子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (50449526)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際人権法 / 健康権 / 人権指標 / 人権の「司法アプローチ」 / 人権の「政策アプローチ」 / 社会権 |
研究概要 |
本研究は、社会権保障のための実施措置の有効性確保を目的に、社会権の中でも最も司法審査が難しく「司法アプローチ」による研究の発展が求められ、一方で「政策アプローチ」による研究が進んでいる健康権を題材に、「司法アプローチ」と「政策アプローチ」の双方から、必要な基礎研究、すなわち①健康権に関する国際判例データベースの作成と判例分析、及び②健康権の指標開発とそれに基づく各国のモニタリングを行うものである。 平成24年度においては、①について、国連の健康権に関する特別報告者であるAnand Grover氏が主宰する“Global Health and Human Rights Project”のメンバーとして、日本の健康権に関連する主要判例を、同プロジェクトが作成する国際判例データベースに提供した。また、特別報告者のミッションとして来日したGrover氏と面会し、日本の健康権の遵守状況に関する情報提供及び意見交換を行った。東日本大震災の被災者の健康権保障について国際的な関心が集まっている現在、以上のような日本からの情報発信・提供は非常に重要であるとともに、今後も継続していく意義がある。 ②については、オランダGroningen大学のBrigit Toebes博士が主宰する“Monitoring the Right to Health: Multi-Country Study”の一環として、Toebes博士が考案した健康権の指標をベースに、国連人権高等弁務官事務所の健康権指標リストと棟居が独自に設定した指標を加え、日本の健康権遵守状況についてモニタリング調査を実施し、その報告書(日本語版)を発表した。同報告書は、国内外における日本の健康権保障の状況の確認、特に2013年の社会権規約第3回日本政府報告書審査に資するものであると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記①について、当初の予定通り、日本の健康権に関連する判例のリストアップ及びサマリー(英文)を作成し、国際判例データベースに提供することができた。ただし、日本の最高裁判所ホームページに英文判例が掲載されていない重要判例については、別途翻訳をし、提供する必要があるが、その点については今後の課題となった。 上記②については、国連高等弁務官事務所の人権指標に関する文書の整理と分析を行い、国際人権法学会インタレストグループ発表(2012年11月11日)及び日本弁護士連合会第75回国際人権に関する研究会(2013年2月15日)において報告するとともに、「日本における健康権の遵守状況(Right to Health in Japan)〔日本語版〕」を公表することができた。ただし、同報告書の英語版については現在翻訳作業中であり、2013年度の早い段階で公表できるよう作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
①については、上述したように、最高裁判所のホームページに英文判例が掲載されていない健康権に関連する重要判例を翻訳し、随時国際判例データベースにアップないしリンクしていくとともに、最新の判例についてもデータベースに情報提供をしていく。また、国際判例データベースに蓄積された各国の健康権に関連する判例について整理し、各国における健康権に関する判例法理を明らかにするため分析を行う。 ②についても、上述のように、日本における健康権遵守状況に関する報告書の翻訳作業を行い、海外からアクセスできるようにWeb上で公表する。また、2013年度中に公表される社会権規約の第3回日本政府報告書審査の最終所見と健康権に関する特別報告者の日本訪問ミッションの報告書を題材に、健康権の指標及び基準を分析するとともに、健康権の法的内容及び性質について検討する。 そして、以上の研究を含めたこれまでの研究成果を整理し、論文及び学会発表をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費について、当該研究費が生じた理由としては、研究代表者の所属大学の異動に伴い、上述したように、日本の健康権遵守状況に関する報告書の英文版の翻訳作業が平成24年度の予算執行期間内に終わらなかったこと、またホームページ開設も同じ理由から、次年度に持ち越されたことがある。 そこで次年度については、以下のような研究費の使用計画を考えている。すなわち、設備備品費、消耗品費、国内旅費及び外国旅費については、当初の研究計画通りに執行するものの、人件費・謝金及びその他の経費については、平成24年度から繰り越した経費を含めて、繰り越し経費については主に人件費・謝金に計上している翻訳費及び英文校正費、並びにその他に計上しているホームページ開設・運営費に充当する形で使用する。
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