本研究は、金融犯罪を規律する手続法を域外的に執行する際の国際法上の根拠を、実証的に分析することを目的とする。国際法上、他国領域内における法執行は、当該領域国の同意がない限り違法である。しかし金融法領域においては対象となる企業や私人が域外に所在していても、当該企業らに国内手続法の遵守を強制し、違反した場合に公的制裁を科す国家実行が見られる。本研究は金融犯罪の特殊性を踏まえながら、そのような実行の妥当性を国際法学の観点から検証する。なお、本研究において、金融犯罪とは、金融活動を規制する法(証券法、租税法、外国公務員贈賄禁止法、資金洗浄罪規制法等)の違反であって刑事上の制裁が科されるものを指す。本研究は、国際法学を主軸としながらも、関連する国内実定法学(各国における証券法、租税法、外国公務員贈賄禁止法、資金洗浄罪規制法、刑法)、比較法学の幅広い知見を動員した総体的アプローチを取る点に特色がある。 研究期間を通じて、金融犯罪の国際的規制に関して国際学会での報告を2回行った他、ハーバード法科大学院での在外研究を含めて、十分に研究を深めることができ、成果を上げることができた。
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