研究課題/領域番号 |
24730042
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 新潟青陵大学 |
研究代表者 |
所 浩代 新潟青陵大学, 看護福祉心理学部, 准教授 (40580006)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換(米国) / 労働法 / 社会保障 / 障害 |
研究概要 |
本年度は、アメリカの障害差別禁止法(ADA)のエンフォースメントの強さを、救済手続の種類、内容、実施状況などの観点から分析した。この作業に並行して、アメリカの連邦レベルにおける障害者の労働政策を、社会保障制度との関連を含めて整理した。具体的には、文献研究、裁判例の検討を行い、得られた知見について、アメリカの研究者とと意見交換を行った(2013年3月カリフォルニア州ロヨラスクールで2日間行われた日米会議でディスカッションを行った)。 国内における文献研究と裁判例の分析では、研究対象として取り上げているADAの救済手続は、行政機関が深く関与しつつ、最終的には裁判所が懲罰的賠償命令や差止め命令などの権限を駆使して、同法が付与する権利の実現を強く推進しているとの印象を受けた。しかし、現地の研究者との意見交換では、実際に裁判において解決される事例は、ごく少なく、多くが当事者レベルで解決されているとのことであった。法の象徴的意義や紛争の予防的効果については、いままであまり実証的研究がなされていなかったところであり、今後の日本の法体系を考える上でも重要な論点として意識されている。この点は、今後の研究活動において探究すべき課題として、次年度の研究において、留意すべきところである。 今年度は、アメリカ法の研究とあわせて、日本法制の動向についても整理する作業を進めている。精神疾患を抱える労働者をめぐる法的問題は、安全配慮義務の枠組みを超えて、就労請求権や人格的利益の保護などの法理にも影響を及ぼしている。この点については、裁判例の評釈を通じて、論点の整理と私見の提示を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、今年度中に、アメリカの研究機関を2週間ほど訪問し、現地の状況をインタビューする予定であった。しかし、インタビュー調査をする予定の研究者とのスケジュール調整が難航し、インタビュー調査は、次年度(平成25年度)に行うことで了承をいただいた。今年度は、夏以降に アメリカにおける調査を実施し、研究計画の遅れを修正したい。 現地調査以外の作業は、順調に進んでいる。電子データーベースを活用した関連裁判例のリストアップ、判決文の収集、文献の収集、それらの資料を活用しての文献研究は、今年度予定していた分はおおむね終了している。成果の一部は、2013年3月の日米研究者会会議において、報告を行い、他の研究者からの講評を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、アメリカ法制の研究によって得られた知見を踏まえて、イギリスの法制度の研究に着手する。イギリスの法制の研究は、当初の研究計画にしたがい、文献研究、裁判例の収集・考察、現地のインタービュー調査を並行して進める予定である。イギリスの研究者との調整については、国内のイギリス法研究者に、適当な研究所の選定と紹介を依頼済みである。インタビュー調査は、冬期休暇に予定している。 また、平成24年度に実施できなかったアメリカ現地調査も、平成25年度夏に予定している。現地の研究者と早急に日程を確定させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度実施する予定であったアメリカでのインタビュー調査が、次年度に延期となったため、研究費の繰越が必要となった。この研究費は、夏以降におこなう現地調査の旅費に充てる予定である。
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